
静岡県の富士スピードウェイにあるサーキットのテント前の芝生に家族全員が集まって座っている。焼き網の上で肉を焼き、子供たちは芝生の上を走り回る。すぐ隣ではキャンプチェアに並んで座ったカップルが、片手にコーヒーを持ちながら笑顔で会話を楽しんでいる。
一見すると、週末に公園へ出かけた家族や恋人のようだ。しかし、ここは一般的な公園とは異なる。耳を鋭く刺すレーシングカーのエンジン音が途切れることなく響いているのだ。
6日から7日まで静岡県の富士スピードウェイで開催された「スーパー耐久シリーズ2026」第3戦「NAPAC富士24時間レース」の現場の様子だ。

スーパー耐久シリーズは量産車をベースに製作されたレーシングカーが、定められた時間内に4.563kmのサーキットを走る耐久レースだ。NAPAC富士24時間レースでは、ドライバーたちが交代でステアリングを握り、6日午後3時から7日午後3時まで丸24時間を走り続けた。
現場の主役はレーシングカーとドライバーだけではなかった。サーキットを訪れた観客の多くはテントやキャンプチェア、テーブルを広げ、長時間続く競技を思い思いの方法で楽しんでいた。家族全員で囲んで肉を焼いたり、レジャーシートに寝転んでエンジン音とタイヤの摩擦音を聞きながら空を見上げたりしていた。
親に手を引かれてサーキットを訪れた子供たちは耳栓を着用し、ミニカーで遊んだり、模型の表彰台の上で記念写真を撮ったりしていた。サーキット周辺では音楽イベントや花火も行われ、祭りを思わせる雰囲気の中、夜が更けても観客たちは席を立とうとしなかった。

レーシングカーのヘッドライトが暗闇を切り裂きながらコースを走る光景も、また別の見どころだった。
モータースポーツは一部の自動車マニアだけの趣味ではない。競技を観るためにサーキットを訪れることを超え、家族と共に一日を過ごす余暇文化として定着している。野球場やサッカースタジアムで食事をしながら試合を観戦するように、サーキットでもキャンプや音楽イベント、食事を共に楽しむ。競技結果を詳しく知らなくてもサーキットを訪れる理由があるというわけだ。
サーキットを巨大な競技場としてだけでなく、誰もが気軽に訪れることができる空間として活用する様子も印象的だった。幼い頃、親に連れられてサーキットを訪れた観客が成人になった後、今度は自分の子供と共に訪れるという循環が生まれている。

主催者によると、今回のスーパー耐久シリーズの入場者数は3日間で6万4,900人に達し、昨年比で1万1,400人増加して過去最高を記録した。
完成車メーカー各社はこうしたモータースポーツ文化を技術開発とブランド戦略に積極的に結びつけている。モータースポーツが大衆文化として定着し、完成車メーカーが再び投資を拡大するという好循環が生まれている。

トヨタ自動車はスーパー耐久シリーズを水素エンジンや代替燃料など次世代技術の試験場として活用している。トヨタの豊田章男会長も「モリゾウ(MORIZO)」の名でレースに直接参加しており、サーキットで絶大な人気を誇る存在だ。多くの観客がサインを求めて列をなし、レース開始前のオープニングイベント「サーキットセレモニー」では、豊田会長の写真を撮ろうとするファンやレーサーたちで賑わいを見せた。
豊田会長はレース前、70歳を記念して「70周超えをやります」と目標を宣言。実際に今回のレースでは75ラップを走行し、目標を達成した。24時間のレースが進行する中、豊田会長も交代でステアリングを握り続けた。

豊田会長が所属するチームの「TGRR GR Corolla H2 concept」(32号車)は今回のレースで24時間の完走を果たした。当初掲げた目標には及ばなかったものの、過酷なレース環境で新技術を検証できた点で成果があったとトヨタは評価している。
総合1位は23号車TKRI松永建設AMG GT3が獲得し、2連覇を達成した。

トヨタにとって、今回のレースは世界で初めて超電導液体水素ポンプ技術を搭載した車両が24時間走行を完了した点にも大きな意義がある。サーキットが単なる競技場を超え、新技術を検証する試験場としても機能していることを示す事例だ。
こうした流れを受け、完成車メーカーを中心にモータースポーツ文化を広げる動きが活発化している。富士スピードウェイも観客を引き寄せるべく、サーキットを複合文化空間へと拡張している。敷地内にホテルを建設し、周辺に高級レストランやベーカリーなどを配置した。ホテルにはトヨタをはじめ、ポルシェ、ブガッティ、ホンダなど様々なメーカーのクラシックカーや競技用車両が展示されており、自動車とモータースポーツに興味のある訪問者のための空間となっている。

サーキットに隣接する複合施設「富士モータースポーツフォレストテラス」には高級マグロ専門店や中華料理店など4つのレストランとペットサービス施設が入っている。2027年3月には温泉施設を備えた新たなホテルがオープンする予定となっている。
施設を開発したトヨタ不動産の担当者は「おいしい食事を楽しむためにわざわざここを訪れてもらえるよう、価格帯がやや高くても非日常的な体験ができるレストランを配置した」と説明した。さらに「ホテルをはじめとする施設ではサーキットを走るレーシングカーのエンジン音が聞こえる。これにより、レースに興味がなかった人も興味を持つようになるのではないかと期待している」と続けた。











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