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2026年9月6日(日) 東京 --

「2~3年以内に軌道上へ」スペースXやGoogleなど、宇宙データセンター開発競う

BCGの基本シナリオでは年間売上高約37兆5,000億~50兆円…強気シナリオでは約125兆円

1MW当たり20年間のコストは約1,031億3,000万~1,171億9,000万円…地上施設の2.5~3倍

打ち上げ費低下でも冷却・故障・通信遅延が商用化を左右

引用:AP通信
引用:AP通信

スペースX、Starcloud、Googleなどの宇宙・テクノロジー企業が、地上の電力・用地不足を解決する代替策として、人工知能(AI)データセンターを地球の軌道上に構築する技術の開発を進めている。

英紙ザ・タイムズは3日(現地時間)、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の分析を引用し、宇宙データセンターの2040年の年間売上高が、基本シナリオでは2,400億~3,200億ドル(約37兆5,000億~50兆円)、強気シナリオでは最大8,000億ドル(約125兆円)に達する可能性があると報じた。

米スペースX最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は、宇宙データセンターについて、地上の用地・電力不足を解決する「唯一の合理的な解決策」だとし、2~3年以内に一部の宇宙データセンターが軌道上に登場するとの見通しを示した。一方、大規模なデータセンター群を保有する英不動産会社SEGROのデービッド・スリースCEOは、実現可能性に乏しい構想だとして反論した。

BCGは公開した報告書で、宇宙データセンターが2040年に世界のAIデータセンター市場の10~15%を占めるシナリオを、最も可能性が高いものとして示した。一方、ザ・タイムズが伝えた年間売上高8,000億ドルは、技術面やコスト面の条件が予想より早く改善することを前提とした強気シナリオだ。

データセンターの立地として宇宙が注目されるのは、地上施設が大量の電力や用地、冷却水を必要とするためだ。太陽光をほぼ継続的に受けられる軌道を活用すれば、安定的に電力を供給しながら、地上の土地や用水面での負担を減らすことができる。

宇宙空間でのAI演算は、すでに小規模な実証段階に入っている。Starcloudによると、2025年11月に打ち上げられた60kg級のStarcloud-1衛星は、エヌビディアのH100グラフィックス処理装置(GPU)を搭載し、軌道上でAIモデルを稼働させ、小型言語モデルの学習も行った。ただ、冷蔵庫ほどの大きさの実証衛星と、地上の大型データセンターに匹敵する商用施設とでは規模がまったく異なると、ザ・タイムズは指摘した。

引用:ニューシス
引用:ニューシス

Googleも「Project Suncatcher(プロジェクト・サンキャッチャー)」を通じ、AI半導体のテンソル処理ユニット(TPU)を搭載した衛星群を構築する方法を研究している。Googleは2027年初めに衛星2基を打ち上げ、TPUが宇宙放射線にどの程度耐えられるかや、衛星間の光通信性能を試験する計画だ。

BCGは、宇宙データセンターを大規模に運用できる技術を備えるまでには5~10年かかると予想している。米政府監査院も今年4月、大型施設に必要な電力・冷却システムは、実際の宇宙環境ではまだ検証されていないと評価した。

技術面と同様に高い障壁となるのがコストだ。BCGは、技術や量産をめぐる問題が解決したとしても、1MW規模の宇宙データセンターを構築し、20年間運用するには6億6,000万~7億5,000万ドル(約1,031億3,000万~1,171億9,000万円)が必要になると試算した。同規模の地上データセンターには、2億3,000万~3億ドル(約359億3,900万~468億7,700万円)が必要になると試算した。

BCGは、今後5~10年間で打ち上げ費用と衛星の重量が大幅に減少し、故障率も低下したとしても、宇宙施設のコストは地上施設より約1.5倍高くなると試算している。打ち上げ費用の低下だけでは、地上データセンターと価格面で競争するのは難しいということだ。

現在の打ち上げ費用をどの程度と想定するかについても、分析機関によって差がある。ザ・タイムズは1kg当たり約3,000ドル(約46万9,000円)としている一方、BCGはコストモデルに約1,500ドル(約23万4,000円)を適用した。Googleの研究者らは、打ち上げ費用が2030年代半ばには1kg当たり200ドル(約3万1,000円)を下回る可能性を示した。ただし、Googleが比較したのは地上データセンターの総コストではなく、エネルギーコストだ。

引用:AP通信
引用:AP通信

冷却も重要な難題だ。真空状態の宇宙には熱を伝える空気がないため、地上の冷却ファンのように熱を外部へ逃がすことはできない。冷却液でサーバー内部の熱を移動させても、最終的には大型の放熱板を通じ、放射によって宇宙空間へ排熱する必要がある。BCGは、100kW級のデータセンター衛星には約400㎡の放熱板が必要になると試算した。

修理が難しいことも、コストや環境負荷を押し上げる。地上では故障した半導体やサーバーを交換できるが、宇宙では部品1つが故障しただけでも衛星全体を放棄しなければならない可能性がある。ザ・タイムズが引用した専門家らは、寿命を終えた衛星が軌道上に宇宙ごみとして残ることや、大気圏に再突入する際の環境負荷も考慮する必要があると指摘した。

こうした制約から、すべてのAI処理を宇宙へ移せるわけではない。BCGは、リアルタイムの応答を必要としない文書・映像の一括処理、国外への持ち出しが難しい国の機微情報の処理、衛星が収集した気候・災害情報の分析を有望な用途として挙げた。一方、対話型AIや自律システムのように即時応答が求められるサービスには地上データセンターの方が適しており、超大規模AIモデルの学習も当面は地上に残る可能性が高いと分析した。ザ・タイムズは、宇宙データセンターは地上施設に取って代わるのではなく、一部のAI処理を分担する補完的な存在となる可能性が高いと指摘した。

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