金正恩総書記、ウクライナ戦争の経験を黄海で活用か…ボルトン氏が「限定的挑発」を警告
北朝鮮軍、ドローン・現代戦の経験蓄積…NLL周辺の島しょ占拠などで米国の防衛意思を試す可能性

ロシアに派兵され、ウクライナ戦争に参加した北朝鮮軍が、実戦経験を積み、ドローン運用能力を高めたうえで、こうした経験や能力を朝鮮半島で活用する可能性があるとの警告が出た。全面戦争ではなく、黄海で限定的な軍事行動を行い、米国が実際に介入するかどうかを試すシナリオだ。
トランプ第1期政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏は1日(現地時間)、米韓研究所(ICAS)主催のオンライン対談で、北朝鮮軍のロシア派兵が朝鮮半島の安全保障に及ぼす影響について言及した。
ボルトン氏は、北朝鮮がウクライナ戦争を通じて実戦経験を積み、ドローン戦の能力を高めており、これを基に韓国に対して限定的な軍事挑発に出る可能性があると主張した。特に、北朝鮮がこうした行動を通じてトランプ米政権の介入意思を確認しようとする可能性があるとみている。
ボルトン氏が具体的に言及した場所は、黄海の北方限界線(NLL)周辺だ。ボルトン氏は、中国が台湾本島を侵攻する代わりに周辺の小さな島を占領し、米国の対応を試す状況を例に挙げたうえで、朝鮮半島でも北朝鮮がNLL周辺の島々の一部を占拠するような行動も考えられると述べた。これはあくまでボルトン氏が示した仮定のシナリオであり、実際に北朝鮮軍の具体的な作戦計画が確認されたという意味ではない。
ウクライナ戦争で得たドローン戦の経験…北朝鮮軍に残るもの

ボルトン氏の警告が注目されるのは、北朝鮮軍がウクライナ戦争で、これまでほとんど経験のなかった現代戦を実際の戦場で経験しているためだ。
米国の北朝鮮専門メディアの38ノースは4月、北朝鮮軍がロシア軍と共に戦いながら、ロシア側と西側双方の戦術や兵器運用の方法に接していると分析した。特に、無人機(UAS)を偵察に用いるだけでなく、砲兵と連携させて標的を発見し、攻撃する方法まで実戦で学ぶ可能性を指摘した。
米戦略国際問題研究所(CSIS)も6月、別の討論会を開き、北朝鮮がウクライナ戦争からどのようなドローン戦の教訓を得ているのかを分析した。専門家らは、現代戦で安価な小型ドローンが偵察や攻撃、砲兵火力の誘導にまで幅広く使われている状況に、北朝鮮が注目していると評価した。
米軍事専門メディアのナショナルディフェンスも7月、専門家らの見解を引用し、北朝鮮が多数の小型戦術ドローンや長距離自爆型無人機の有用性をウクライナ戦争で学んでいると伝えた。
北朝鮮にとって重要なのは、特定の種類のドローンを入手することよりも、ドローンと砲兵、歩兵、偵察手段を実際の戦場でどのように連携させるかを実戦で学ぶことだとの分析がある。
朝鮮半島のように、軍事境界線とNLLを挟んで韓国軍と北朝鮮軍が近距離で対峙している環境では、こうした能力が限定的な局地挑発にも活用される可能性がある。小型ドローンで監視網をかく乱したり、標的情報を確保した後に砲兵や特殊作戦部隊と連携したりする形だ。
NLLで米国の意思を試す?…黄海が危険な理由

黄海のNLL周辺は、過去にも韓国と北朝鮮の軍事衝突が繰り返された地域だ。北朝鮮はNLLを認めず、独自の海上境界線を主張してきた。この一帯では、延坪(ヨンピョン)海戦や韓国哨戒艦「天安(チョナン)」への攻撃、延坪島砲撃事件などの衝突が相次いだ。
ボルトン氏が注目したのも、こうした地理的特性だ。大規模な韓国侵攻のように直ちに全面戦争を引き起こす行動よりも、規模を限定した軍事行動によって米韓両国がどの程度対応するのかを見極めることが、北朝鮮にとってより現実的な試験となる可能性があるとの主張だ。
ボルトン氏は特に、北朝鮮による挑発の可能性をドナルド・トランプ米大統領の対北朝鮮政策と結び付けた。トランプ大統領が北朝鮮の金正恩総書記との首脳会談を再び模索する可能性がある中、北朝鮮が米国の防衛コミットメントの実効性を見極めようとする可能性があるという。ボルトン氏は、トランプ大統領が平壌で金総書記と会談する可能性にも言及し、首脳間の直接交渉が十分な準備がないまま進む危険性についても警告した。
ただ、北朝鮮軍がウクライナ戦争で得た実戦経験が、直ちに黄海での挑発につながるとみる根拠はない。ドローンの運用経験と、朝鮮半島での実際の作戦遂行能力との間にも差がある。
それでも、北朝鮮軍が実際の戦場で積んだ経験が、これまでとは異なる新たな要因として浮上していることは明らかだ。ウクライナ戦争が終わっても、北朝鮮軍がそこで身に付けた戦術やドローン運用の経験は消えないためだ。ボルトン氏の警告も、北朝鮮軍のロシア派兵が遠く離れた欧州だけで完結する問題ではなく、朝鮮半島の軍事的リスクにつながる可能性があるという点に焦点を当てている。
