
これを見てアウディファンも戸惑った
ヌヴォラーリが公開されたとき、アウディファンの反応は複雑だった。歓迎よりも先に、戸惑いにも似た違和感を覚えるという反応が目立った。既存のアウディが積み上げてきたデザイン言語とは、まったく異なる方向性で登場したからだ。アウディ自身はこれを「ラディカル・ネクスト」と呼ぶが、その名が示すとおり、従来との決別を宣言するモデルだ。長年のアウディファンほど、このクルマの前で立ち止まらずにはいられないはずだ。馴染み深いブランドが見慣れない顔で帰ってきたような感覚を抱かせる。

グリルだと思ったら構造体だった
フロントには64個のアルミパネルが角度を変えて配置されている。一見グリルに見えるが、実態は空力を最適化するための大規模な構造体だ。装飾のための装飾は一切ない。すべての線と面が機能のために設計されている。テスラのミニマリズムとハイパーカーの攻撃性を融合させたようだと評されるゆえんだろう。見れば見るほど美しいというより、見れば見るほど畏怖を感じさせるデザインだ。

コーナーの前にクルマが先を読む
前輪にはそれぞれ独立した電動モーターが搭載されている。左右の力を個別に制御する構造なので、コーナーでクルマが自動的にバランスを取る。だがそれだけではない。ドライバーの運転パターンを学習し、グリップ力を先読みするシステムまで備わっている。滑ってから制御するのではなく、滑る前に介入するシステムだ。自分が上手く走らせているという感覚よりも、クルマが自分を引き上げてくれると感じさせる一台だ。

ただ速いだけではないクルマ
V8ツインターボに電動モーター3基が搭載されている。エンジンは最高1万rpmまで回転する。カーボンセラミックブレーキ、センターロックホイール、DRSボタンまで備える。スペックだけを見ればスーパーカーそのものだが、アウディ自身はこのクルマをそう位置づけていない。単に速いマシンではなく、ドライバーをより優れたドライバーへと変えるクルマだと説明する。その言葉が誇張に聞こえないのが、このクルマの凄みだ。

内装から多くを省いたのに高級に見える理由
室内に入ると、一見して削ぎ落とされた空間が広がる。大型ディスプレイもなく、華やかな照明もない。運転に必要な要素だけを残した構造だ。しかし不思議と物足りなさは覚えない。アウディは「明確さと制御力を追求した結果」と説明するが、実際に座るとその意味がすぐに腑に落ちる。多くのモデルが要素を加えることで高級感を演出しようとするなかで、ヌヴォラーリは削ぎ落とすことでそれを実現した。省くことにも高度な技術が必要であることを示す内装だ。

乗り込む前から心拍数を上げるクルマ
ヌヴォラーリは、写真と動画とでは印象が異なる。実物を前にすれば、さらに別の顔を見せるはずだ。アウディは技術を利便性のための道具としてではなく、ドライバーの心拍数を上げるための道具と位置づけているが、このクルマはまさにその言葉を体現している。試乗前からすでに特別な何かを感じさせるのは、デザインがその役割を担っているからだ。スーパーカーという言葉がこのクルマにはいくぶん手狭に感じられる理由が、そこにある。











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