AI・40兆ドル米政府債務で高まる中立金利…米国債利回りに上昇圧力
AI投資・政府借り入れが資金需要を押し上げ、実質金利に上昇圧力…NY連銀推計1.65%
中立金利上昇ならFedの政策金利も「より高く、より長く」…長期債にはタームプレミアムも

最近の米国債利回りの急上昇の背景には、人工知能(AI)投資と巨額の政府借り入れによる「中立金利」の上昇があるとの分析が出ている。景気を刺激も抑制もしない理論上の金利である「Rスター(R-star・r*)」が構造的に上昇しているのであれば、米国の金利は過去より高い水準に長期間とどまる可能性があるという。
3日(現地時間)、ロイター通信によると、ウォール街では、AIインフラ向けの大規模な設備投資と米政府による巨額の借り入れが資金需要を押し上げ、Rスターを引き上げているとの見方が広がっているという。
Rスターとは、物価が安定した状態で、景気を過熱させることも冷え込ませることもない実質中立金利を指す。直接観測することはできず、経済モデルを通じて推計される。
ニューヨーク連邦準備銀行の経済モデルによると、Rスターは今年第1四半期に1.65%となり、第4四半期の1.73%から小幅に低下した。ただ、昨年第4四半期の1.36%と比べると、かなり上昇している。
市場では、実際の中立金利がこれよりさらに高い可能性に注目が集まっていると、ロイター通信は伝えた。アマゾンやマイクロソフト(MS)、アルファベットなどの大手クラウド事業者「ハイパースケーラー」がAIインフラ投資のために大規模な社債を発行する一方、米政府も国債発行を拡大し、限られた資金を巡って競争しているためだ。
トゥルイスト・ウェルスで債券を担当するマネージングディレクターのチップ・ヒューイ氏は「Rスター上昇の有力な要因は、AIインフラ整備を巡る大規模投資と政府債務の増加だ」とし、「いずれも資本需要を増やし、実質金利を押し上げる可能性がある」と述べた。
中立金利が上がればFedの政策金利も上昇
Rスターが構造的に上昇すれば、米連邦準備制度(Fed)が景気を過熱させない政策金利の水準も併せて高くなる。これにより、2年債や5年債など短期・中期の米国債利回りに上昇圧力がかかる可能性がある。
10年債には中立金利の上昇だけでなく、長期債を保有することへの追加的な補償である「タームプレミアム」の上昇も反映される。特に、巨額の国家債務と続く財政赤字を背景に、30年債利回りに最も強い上昇圧力がかかっているとの分析だ。
クリストファー・ウォラー米連邦準備制度理事も同日、米国の財政状況への懸念から、米国債の安全資産としてのプレミアムが以前ほどではなくなっているとして、自身の中立金利の推計値を引き上げる可能性があると明らかにした。
米国の政府債務が40兆ドル(約6,263兆8,000億円)に達するなか、AI企業による大規模な資金調達も重なり、公共部門と民間部門が同時に巨額の資本を求める異例の状況となっている。
UBSのウルリケ・ホフマン=ブルチャルディ最高投資責任者(CIO)は「構造的な資本需要がこれほど高い状況では、Fedが金利を再びゼロ水準まで簡単に引き下げることはできない」と述べた。
AI、長期的にはむしろ金利を下げる可能性も
ただ、AIが中立金利を上昇させ続けるかどうかは不透明だ。短期的にはデータセンターや半導体などへの巨額投資が資本需要を押し上げるものの、長期的にAIが生産性を高め、物価を押し下げる効果をもたらせば、名目金利はむしろ低下する可能性があるためだ。
クレジットサイツの投資適格債・マクロ戦略責任者、ザカリー・グリフィス氏は「短期的にはAIがRスターを押し上げるが、長期的にはディスインフレ、あるいはデフレ効果によって、より低い名目政策金利へ転じる可能性がある」と述べた。
結局、最近の中立金利上昇が米国経済の構造的な変化なのか、一時的な投資サイクルなのかは、現時点では判断が難しいというのが専門家の見方だ。これを見極めるには今後数年間の経済指標が必要だと、ロイター通信は付け加えた。

