
日産自動車が欧州で最も売れているSUV「キャシュカイ」のEVモデル開発を中断・凍結していたことが明らかになった。
ロイター通信が複数の関係者の話として単独で報じたところによると、競合他社が欧州のEV市場に相次いで安価な新型車を投入するなか、日産はEV化の競争から距離を置きつつあるという。財務負担を軽減するための措置とみられるが、業界ではEVリーダーの地位を競合に譲り渡した日産が、主力車種でも存在感を失いかねないとの懸念が出ている。
EV化から距離を置く欧州の主力SUV
キャシュカイは日産の欧州事業を支える主力モデルだ。2025年時点で日産の欧州全体の販売台数33万台のうち約45%をこのモデルが占めており、現在はガソリンモデルとe-POWERハイブリッドモデルのみが販売されている。
日産は2023年に英国政府と共同発表していたキャシュカイのEV生産計画を、ひっそりと撤回した。開発凍結の時点は2024年初めであり、ロイター通信が今回初めて把握し、報道した。3年前、日産は英国北東部のサンダーランド工場でキャシュカイのEVを生産すると発表し、英国政府はこれをEV生産拠点として自国を位置づける契機として歓迎していた。仮に開発が再開されても、市販されるのは2030年代初頭以降になるとの見通しを、情報筋2人が明らかにした。
日産は今回の報道に対するコメントを控え、「電動化ラインアップの拡大に引き続き力を入れる」と述べた。また「欧州のEV需要は大きく変動しており、均衡のとれた電動化戦略を推進している」と加えた。
キャシュカイ以外にもサンダーランド工場では、コンパクトEV「リーフ」も生産しており、2025年4月には電動クロスオーバーSUV「ジューク」の新型モデルを発表している。
世界規模の構造改革と中国EVの低価格攻勢
今回の決定は日産が全世界で進行中の大規模な構造改革と関連している。日産は2024年度(2025年3月期)に6,708億円の最終赤字を計上し、従業員2万人の削減と世界7工場の閉鎖を決めた。車種数についても56から45へと削減する方針を示した。米国ではミシシッピ州キャントン工場で計画していた電動SUV2車種の生産を取りやめ、ハイブリッド車に集中することにした。サンダーランド工場で日産グループのジャトコが推進していたEV統合パワートレインの生産計画も合わせて白紙撤回された。
外部環境も決定に影響を与えた。EUが電気自動車に域内調達比率の要件を新たに設ける方向で検討を進めるなか、2020年にEUを離脱した英国で生産された車両が「欧州産(Made in EU)」と認定されにくくなる可能性が、同工場の障壁となっている。英国で生産される自動車の約60%がEUに輸出される。英国自動車工業会(SMMT)は、この問題が英国の自動車産業全体に深刻な打撃を与えかねないと警告している。
中国のEVメーカーによる低価格攻勢も、日産がEV投資に慎重になった背景の一つだ。グローバルなEV市場で中国ブランドが競争力のある価格で欧州市場を攻略するなか、既存の完成車メーカーが収益性の低下に直面している。
日産は今月、中国メーカーの奇瑞汽車とサンダーランド工場の生産ラインを同社の受託生産に活用する可能性を検討し始めた。
英国政府は日産に対し、新型車の生産と雇用維持を条件とした追加の財政支援を協議している。サンダーランド工場は約6,000人を直接雇用し、2024年の英国全体の自動車生産量の35%以上を担っていた。英国政府は日産の事業決定については言及を拒否した。また、EV販売目標を達成できない場合に罰則を科す現行規制を緩和する案も検討されていることが明らかになっている。この措置が実現すれば、日産がサンダーランドでハイブリッド車の生産比率をさらに高める余地が生まれる。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストの吉田達生氏は、米国の自動車関税政策において日本の主要メーカーのなかで日産が最も深刻な影響を受けるとみられると指摘。コストを消費者に転嫁した場合、販売台数で相当な打撃を受ける可能性があると述べた。











コメント0