「制御不能」とトランプ氏が批判…スミソニアン初の黒人トップが年末退任へ
ロニー・バンチ氏「38年間共に歩めたことは光栄」「今年末まで勤務する」と表明人種差別を過度に強調しているとして米大統領が「制御不能」と公然と批判

奴隷制や人種差別など自国史の暗い側面を過度に強調しているとして、米国のドナルド・トランプ大統領から強い圧力を受けてきた米国最大の博物館・研究機関、スミソニアン協会のロニー・バンチ3世事務総長(写真)が辞任を発表した。
8日(現地時間)、ニューヨーク・タイムズ(NYT)などによると、2019年に就任したバンチ事務総長は、今年末まで勤務した後、退任する。バンチ事務総長は同日、「人生のほぼ半分をスミソニアンで働き、スミソニアン・ファミリーの一員として過ごせたことは大きな光栄だった」と述べた。スミソニアン協会初の黒人事務総長であるバンチ事務総長は、ホワイトハウスの圧力による辞任ではないとしながらも、「正直に言って、ストレスは非常に大きかった」と打ち明けた。ワシントンDCを中心に21の博物館や研究・教育機関、国立動物園などを運営するスミソニアン協会は、連邦政府から毎年10億ドル(約1,536億円)以上の支援を受けているが、政府が直接運営する機関ではない。
トランプ大統領は昨年、スミソニアン協会が米国の功績よりも奴隷制や人種差別など暗い歴史に過度に焦点を当てているとして、「制御不能」と公然と非難した。その後、同協会は、トランプ政権がいわゆる「ウォーク(過度な政治的正しさ)」を排除するとして展開してきた文化戦争の主要な標的となった。ホワイトハウスは7月にも、162ページに及ぶ『アメリカの物語を救う』報告書で、同協会が米国の功績よりも人種やアイデンティティー、過去の不正に偏った歴史を示していると批判した。傘下の博物館や美術館で、女性に扮して公演する男性のドラッグクイーンを取り上げた展示や、米国建国の父たちが奴隷を所有していた事実、米先住民の多くの部族が姿を消した歴史を扱った展示などを例に挙げ、「巧妙に覆い隠された反米主義」だと主張した。
バンチ事務総長はホワイトハウスと正面から対立するのではなく、事案に応じて対抗すべき部分と譲るべき部分を見極めて対応してきた。「私の目標は自分が気分良くなることではなく、勝つこと、つまりスミソニアンを守ることだった」と述べ、「時には戦い、越えてはならない一線を明確にする一方、時にはそのまま受け流すこともあった」と語った。
歴史学者のバンチ事務総長は、38年間にわたってスミソニアン協会で働き、国立アフリカ系米国人歴史文化博物館の設立を主導した。奴隷制や公民権運動の痛ましい歴史だけでなく、黒人の功績にも光を当てる博物館をつくり、共和、民主両党の支持を得た。
