「AIを使うだけでは評価しない」EY、社員報奨に156億円 最大390万円
EY、AI活用の報奨に1億ドルを配分
リーダーシップ・判断力など人間ならではの能力を評価
AIを多用することより批判的な活用を重視

世界的な会計・コンサルティング大手のEY(アーンスト・アンド・ヤング)が、今年の社員への報奨に1億ドル(約155億9,700万円)を投じると明らかにした。今回の報奨は、適応力や革新性、判断力といった人間ならではの能力を発揮した社員を対象とする。
比較的小さな貢献に対しては1人当たり最大500ドル(約7万8,000円)を即時に支給し、会社に実質的な変化をもたらした社員やチームには最大2万5,000ドル(約390万円)を現金で支給する方針だ。
EYが示した報奨の支給基準は、大きく3つだ。「リーダーシップ」「測定可能な成果につながる変化」「会社に与えた影響」である。リーダーシップを発揮し、イノベーションを通じて意味のある変化を生み出し、適切な判断によって会社にプラスの影響を与えたリーダーを手厚く報いる狙いだ。
実際、EYは人工知能(AI)を最も積極的に導入してきた企業の一つでもある。同社は2023年、14億ドル(約2,183億6,000万円)を投じ、独自のAIプラットフォーム「EY.ai」を立ち上げた。また、保有する専門知識とAI技術を組み合わせ、独自の対話型AI「EYQ」も発表した。業界で初めて監査業務にAIエージェントを導入したのもEYだった。
こうしたEYが「人間ならではの能力」を報奨の対象としたのは、単にAIを多く使うことよりも、「誰が」「どのように」使うかによって結果が変わるためだとみられている。
実際、別のコンサルティング会社KPMGがテキサス大学オースティン校の研究チームと共同で職場で実施した研究結果も、こうした見方を裏付けている。
研究チームは、米国内の就業経験が浅い523人にAIエージェントを活用して特定の課題に取り組ませた。人間が介入せず、AIエージェントだけで課題を遂行した結果を「基準」とし、実験参加者がAIエージェントを活用して導き出した結果を評価した。
評価の結果、AIの活用度に応じて、参加者はAI増幅型(AI Amplifiers、50.1%)、AI委任型(AI Delegators、25.8%)、AI見習い型(AI Apprentices、24.1%)の3つに分類された。研究チームは、知識やスキルの水準が同じでも、AIを活用して生み出す成果には差が生じる可能性があることが分かった。その差を生んだのは、「作業全体の流れを統括する」「問題を適切に定義する」「専門知識を活用する」「成果物を批判的に評価する」「繰り返し修正する」といったプロセスを経ているかどうかだった。
一方、実際の採用現場でもこうした点が重視され、人事担当者が「人間ならではの資質」をより重く評価する傾向がみられている。PwCが今年、世界27カ国・地域の10億件を超える求人広告を分析した結果、AIの影響を強く受ける職種ほど、企業が判断力や創造性、リーダーシップといった「人間ならではの能力」をより多く求めていることが分かった。
