労働者でも資本家でもない…AIが生んだ「第3の階級」
変わる資本主義の階級構造…AIの波に乗れば「新たな資産家」に
労働者4人に1人が「AIの影響下」
熟練度で賃金格差拡大…OpenAI・Anthropic人材の市場価値が急騰
労働分配率53%で「過去最低」
18世紀の産業革命以降に定着した、資本家と労働者からなる資本主義の構造が、人工知能(AI)の導入によってさらに揺らいでいる。OpenAIやAnthropic、NVIDIAなどAIの恩恵を受ける企業の従業員が、並の企業家を上回るほどの収入を得る一方、AI関連業務に適応できるかどうかによって、労働者の雇用の安定性や待遇に大きな差が生じているためだ。こうした変化は、極右と極左が同時に台頭する世界の政治情勢にも影響を及ぼすとみられる。
◇崩れる「労働者階級」の基準

数字だけを見ると、米国では「労働者」が増えた。世論調査機関のピュー・リサーチ・センターが10日に公表した最新調査によると、米国の成人の60%が自らを「労働者階級」だと回答した。2024年の54%から6ポイント上昇した。ブルーカラーでは77%に上ったほか、事務職などその他の職種でも61%と高かった。
専門家は、こうした結果について、労働者をどう捉えるかという基準が曖昧になっていることを示すものだと分析している。政治学者のケビン・ルーニング氏は「複数の調査を見ると、米国人は経済的に不安定だと感じるとき、自らを労働者階級と位置付ける傾向がある」と話した。AIの波で職を失う可能性が高まったことで、自らを労働者だと答える人が増えたということだ。
むしろ、製造業で働く伝統的な意味での肉体労働者は大幅に減っている。米労働省労働統計局(BLS)によると、先月の米製造業の雇用者数は1,264万人で、非農業部門の雇用全体の7.9%にすぎなかった。製造業の雇用者数がピークだった1979年6月には、この割合は21.7%に達しており、現在はその半分にも満たない水準だ。
こうしたなか、技術革新によって「生産手段を持つ資本家」と「労働力の対価として賃金を受け取る労働者」の境界は、ますます曖昧になっている。特に1970年代以降、コンピューターや産業用ロボットなどによって反復作業が代替され、労働者の間でも生産性や賃金の格差が広がった。マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授とボストン大学のパスクアル・レストレポ教授が1980~2016年の米労働市場を分析したところ、自動化の影響を受ける度合いが上位20%のグループでは実質賃金が12%減少した一方、自動化の影響が最も小さいグループでは約26%増加した。
◇AIが引く新たな「階級線」
こうした変化は、生成AIの登場によって、会計、金融、法律、プログラミングなど、高度な技能を要する専門職にも広がっている。国際労働機関(ILO)は昨年、「世界の労働者の4人に1人が、生成AIの影響を一定程度以上受けている」と発表した。こうした社会の変化を背景に、副業や投資で所得を増やす労働者もさらに増えている。ニューヨーク市立大学のブランコ・ミラノヴィッチ教授によると、資本所得で上位10%に入る人のうち、労働所得でも上位10%に入る人の割合は、1950年の約10%から2018年には約30%に上昇した。こうした傾向はAIによってさらに加速しているとの見方が出ている。労働所得と資本所得の双方で富を増やす「ホモプルーティア(富裕を意味するラテン語)」が、第3の階級として登場しているとの分析もある。
AIの直接的な恩恵を受けられない、または資本所得を得られない労働者の所得水準は、相対的に低下する見通しだ。シカゴ大学の経済学教授、ブレント・ナイマン氏はニューヨーク・タイムズ(NYT)への寄稿で、「ChatGPTを使ったことがある人なら、現在人間が担っている数多くの仕事を、遠からず技術が代替するようになるという見方に同意するだろう」としたうえで、「付加価値全体に占める労働者の取り分を示す労働分配率は、低下傾向をたどらざるを得ない」と主張した。直近の第1四半期における米国の非農業企業部門の労働分配率は52.8%で、統計を開始した1947年第4四半期以降で最低となった。第2次世界大戦直後は約65%だった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のコラムニスト、アンディ・ケスラー氏は「米国の民主社会主義者の間では『労働者階級を中心に据えた政治』というスローガンが出ているが、現在の労働者階級は最上層から下層まであらゆる階層に広がっている」としたうえで、「従来の階級区分が政治的にも社会的にも通用しない時代になった」と述べた。
