「口座900万突破」ドコモショップが銀行窓口に 196店舗から始める狙い
非金融企業、金融領域の拡大競争が加速
「ドコモの銀行」口座数900万を突破

コンビニや携帯ショップなど、日常生活の中にあるオフラインの接点を金融インフラに変える動きが国内で広がっている。セブン-イレブンが全国のコンビニ網を生かしてセブン銀行を国内最大のATM事業者に育てたのに続き、今度はNTTドコモが全国の携帯ショップを事実上の銀行窓口として活用し始めた。従来の銀行のように多額の費用をかけて支店を新設するのではなく、本業で築いた顧客基盤や店舗網を金融事業に活用する戦略だ。
1日、金融業界によると、NTTドコモ傘下のドコモSMTBネット銀行は8月21日から、全国のドコモショップで「ドコモの銀行」の口座開設支援サービスを始めた。ドコモSMTBネット銀行は、ドコモが買収した旧住信SBIネット銀行で、8月に社名を変更し、ドコモブランドを前面に打ち出した。
ドコモショップのスタッフが銀行サービスの内容を説明し、顧客がスマートフォンで口座を開設するのをサポートする。実際の情報入力などは顧客自身が行うが、銀行代理業の許可や金融サービス仲介業の登録を済ませた店舗では、スタッフによる対面サポートを受けられる。サービスは196店舗で開始し、今後順次拡大する予定だ。
最大の狙いは、全国に展開するドコモショップを、新たに銀行店舗へ投資することなく金融の営業網として活用する点にある。ドコモSMTBネット銀行はスマートフォンだけで口座を開設できるインターネット銀行だが、むしろオフラインの接点を競争力として生かそうとしている。
こうした戦略の先駆けがセブン銀行だ。流通大手セブン&アイ・ホールディングス系列としてスタートしたセブン銀行は、全国のセブン-イレブン店舗にATMを設置し、従来の銀行とは全く異なる営業網を築いた。現在、国内のATM設置台数は2万8,000台を超え、セブン-イレブンだけでなく、商業施設や空港、駅などにも広がっている。今年からはファミリーマートにもATMの設置を始めており、今後は国内のATM網を約4万4,000台まで拡大する計画だ。
セブン銀行がコンビニという「場所」とATMを金融インフラに変えたとすれば、ドコモはさらに一歩進み、携帯ショップで働く「人」まで金融営業に活用する点が異なる。スマートフォンの購入や料金プランの変更で店舗を訪れた顧客に、銀行口座の開設を自然な形で提案できるためだ。
ドコモがオフライン営業に自信を見せる背景には、旧住信SBIネット銀行が培ってきた住宅ローン事業のノウハウもある。同銀行はインターネット銀行でありながら、住宅ローン申し込みの約95%が対面での案内を経て行われてきた。住宅ローンの累計取扱額は15兆円を超え、国内のインターネット銀行では最大規模となっている。

ドコモブランドの効果も表れている。ドコモSMTBネット銀行の円山法昭社長によると、社名変更後、インターネットでの検索数は3倍に増え、新規口座の開設も数十%伸びた。今年2月に900万を超えた口座数を、長期的には国内のメガバンクに並ぶ水準まで拡大することを目指している。
国内では、通信各社による金融事業への進出競争も激しさを増している。KDDIは通信と「au PAY」、銀行を組み合わせた経済圏を構築し、ソフトバンク陣営も「PayPay」を軸に銀行・証券・決済を連携させている。ドコモもクレジットカード「dカード」、決済サービス「d払い」に銀行を加え、金融サービスの経済圏を完成させようとしている。
一方、課題も残る。「ドコモの銀行」の口座を「dカード」の引き落とし口座に指定するとポイント特典を受けられるが、通信料金と銀行サービスを直接連携させた特典は競合他社に比べて少ない。「d払い」の残高を「ドコモの銀行」に移す際にも、現時点では手数料がかかる。
金融業界では、国内のオフライン金融網という概念そのものが変わりつつあるとの見方が出ている。かつては銀行が顧客と接するために自ら支店を設けていたが、現在はコンビニや携帯ショップなど、すでに顧客が集まる場所に金融サービスが入り込む形へと変化している。セブン-イレブンがコンビニをATM網に変えたとすれば、ドコモは携帯ショップを銀行窓口へと変えつつある。


