「ゲームに注いだ時間と金も遺産になる」…亡き36歳男性のアカウント87個を母親が相続

中国の裁判所が、死亡した利用者が残したゲームアカウント87個の使用権について、母親への相続を認める判断を下した。
ゲーム会社がアカウントの所有権を持っていたとしても、利用者がアカウント内に築いた財産的利益まで相続の対象から除外することはできないとの趣旨だ。
中国メディアの深港オンラインが5日に報じたところによると、北京市石景山区人民法院はこのほど、ゲームアカウントの相続を巡る訴訟で、死亡した顧さんの母親である陳さんの訴えを認めた。
顧さんは20代のころから10年以上にわたり、一つのゲームで本人認証済みのアカウント87個を開設していた。
しかし、昨年5月30日、36歳の若さで亡くなった。
息子の死後、経済的に苦しい状況に置かれた母親の陳さんは、息子が残したゲームアカウントの存在を思い出した。
息子が長年にわたり費やした時間や金銭を考えれば、アカウントを現金化できるのではないかと考え、ゲーム会社に名義変更と相続を求めた。
しかし、ゲーム会社は利用規約を根拠に、これを拒否した。
利用規約では、アカウントとアカウント内の仮想アイテムの所有権は会社にあり、利用者にはアカウントデータに対する限定的な使用権だけが与えられると定められていた。
また、アカウントには本人認証情報がひも付けられており、個人的な性格が強いことも、相続を拒否する理由として挙げられた。
納得できなかった陳さんは、最終的にゲーム会社を相手取って訴訟を起こした。
所有権ではなく「使用権に含まれる財産的利益」を相続
裁判所は、ゲームアカウントやキャラクターデータ、仮想アイテム、装備、ゲーム内通貨などについて、利用価値と財産的価値を持つ「ネットワーク上の仮想財産」に該当すると判断した。
利用規約に基づき、アカウントや関連データの所有権はゲーム会社にあるものの、利用者に与えられた使用権にも財産的価値があると認定した。
利用者がアカウントを育てるために時間や労力、金銭を投入しており、アカウントや仮想アイテムが実際に利用されたり、取引されたりする可能性があるためだ。
裁判所は、中国民法典第127条と第1122条を根拠に、ネットワーク上の仮想財産も法律によって保護され、死亡時に個人が保有していた合法的な財産は遺産に含まれると説明した。
また、ゲームアカウントが本人認証を通じて故人と結び付いていたとしても、譲渡できない権利とみなすことは難しいと判断した。
法律上、ゲームアカウントの使用権の相続を禁止する規定はなく、ゲーム会社の利用規約にも、利用者の死亡後に相続人が使用権を引き継げないとの条項はなかった。
これを受け、裁判所は顧さん名義のゲームアカウント87個の使用権を母親に相続させ、ゲーム会社に対し、判決確定後15日以内にアカウントの本人認証情報を変更するよう命じた。
双方とも控訴しなかったため、判決は確定した。
今回、母親が相続したのはゲームアカウントそのものの所有権ではなく、アカウントの使用権に含まれる財産的利益だ。
ゲーム会社はアカウントとデータの所有権を引き続き保有し、相続人が使用権を引き継ぐ仕組みとなる。
ただし、中国の裁判所は、今回の判決をすべてのゲームアカウントやSNSアカウントが自動的に相続できるとの意味に拡大して解釈すべきではないと強調した。
アカウントの用途や財産的価値、利用規約の内容などを個別に検討する必要があり、収益を生み出すために使われるアカウントと、私的な会話や個人情報が含まれるSNSアカウントでは、相続の際に異なる判断が下される可能性がある。
