アップルのティム・クックCEO退任、株価2000%上昇の15年 後任はターナス氏

アップルを15年間率いたティム・クック最高経営責任者(CEO)が、8月31日(現地時間)付で退任した。在任中に数十億台のアップル製品を販売し、同社のエコシステムを大きく成長させたと評価されている。
一方、中国への高い依存度や各国規制当局による独占禁止法上の圧力といった課題も残した。人工知能(AI)分野では、他の大手テクノロジー企業に後れを取っているとの指摘もある。
Yahoo Financeなどによると、クック氏は従業員に対し、「私たちには、初めて向き合った時よりも世界を良い場所にして次の世代へ残す機会と責任があった。その目的意識こそが、アップルを特別な場所にしている」と退任にあたって述べた。
後任に指名されたハードウェアエンジニアリング担当上級副社長のジョン・ターナス氏については、「非常に優秀な人物に指揮を引き継げることをうれしく思う」と表明。「世界を変える製品を生み出すために何が必要かを、ジョンほど理解している人はほとんどいない」と評価した。
クック氏はさらに、X(旧ツイッター)に「明日、9月1日から取締役会議長となり肩書は変わるが、アップルへの愛は永遠に変わらない。いつも刺激を与えてくれてありがとう」と投稿し、アップルの利用者やファンに感謝を伝えた。
ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージングパートナー、ジーン・マンスター氏は、「クック氏は、スティーブ・ジョブズ氏という誰にも代えられない人物の後を継ぎ、その役割を見事に果たした」と評価した。
株価2000%上昇、従業員は16万6千人に
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、クック氏のCEO在任中、アップルの株価は2000%以上上昇した。S&P500指数に占める比率も3%から7%へ、2倍以上に拡大した。
自社株買いや配当を通じた株主還元は、1兆ドル(約160兆800億円)を超えた。従業員数は約6万人から16万6,000人に増え、現在は27カ国・地域で535店舗を展開している。
iPhoneの販売も大幅に増加した。米調査会社IDCによると、クック氏の在任中にアップルが出荷したiPhoneは31億台に上る。一列に並べると、地球から月まで届く長さになるという。
クック氏の在任中には、Apple WatchやAirPodsなど5つの新たな製品群が投入された。Apple WatchとAirPodsは主力商品に成長し、HomePodやApple Vision Proも特定の市場で一定の地位を築いた。一方、自動車開発プロジェクトは2024年に中止された。
FTは、クック氏のハードウェア分野における最大の功績は、製品の外からは見えない部分にあると評価した。
アップルはインテルなどの外部企業が製造する半導体への依存を減らし、自社設計チップへの移行を進めた。これにより、同社の利益率は2011年の約40%から現在の約50%まで上昇したとされる。
サービス企業への転換を推進
クック氏はサービス事業も大きく成長させた。アップルはハードウェア中心の企業から、Apple Pay、iCloud、App Store、Apple Musicなど幅広いサービスを提供する企業へと転換した。
現在、アップルの有料サブスクリプション契約数は15億件に達している。
生成AIの遅れと独占禁止法上の圧力
一方、巨額の投資が必要な生成AIモデルやデータセンターの開発競争で、アップルが後れを取っている点は懸念材料となっている。
同社は2024年に「Apple Intelligence」を発表し、生成AI分野での競争に本格的に参入した。しかし、中核機能の提供は相次いで遅れている。
各国規制当局による独占禁止法上の圧力も強まった。特に欧州連合(EU)は、2011年以降、アップルに対して総額約40億ドル(約6403億2,000万円)の制裁金を科している。
地政学リスクも残る。2024年に公表されたサプライヤーリストによると、全サプライヤーの90%が、中国または台湾でアップル製品の少なくとも一部を生産している。
アップルは昨年、米国内に6000億ドル(約96兆500億円)を投資すると表明した。ただ、中国への依存度が高いため、米中対立に伴う関税などの影響を受けやすい状況が続いている。
クック氏は、App Storeから国際ニュースアプリを削除するなど、中国政府の政治的な要求を受け入れる姿勢も示してきた。
クック氏が在任中に受け取った基本給、株式報酬、現金インセンティブなどは、総額8億8000万ドル(約1408億7,000万円)に上るとされる。
アップル株を約0.02%保有しており、米誌フォーブスはクック氏の純資産を約30億ドル(約4802億4,000万円)と推定している。

