加盟国なのにプーチン逮捕を拒否、5カ国は脱退通告 ICCが24年で最大の危機
モンゴル・タジキスタン、逮捕状の執行を拒否
ベネズエラ・チャドはICC脱退を通告

ジェノサイド(集団殺害)や戦争犯罪、人道に対する罪、侵略犯罪など、重大な国際犯罪を捜査・裁判する国際刑事裁判所(ICC)が、創設以来最大の危機に直面している。ICCは1998年に採択されたローマ規程に基づき、2002年にオランダ・ハーグに設立された国際機関だ。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は29日(現地時間)、「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する逮捕状の発付をきっかけに、ICCが激しい地政学的な反発にさらされ、組織そのものの存続が脅かされている」と報じた。
米国のドナルド・トランプ政権は、ネタニヤフ首相への逮捕状発付を問題視し、ICC関係者に対する制裁を相次いで発表したほか、ICCの解体や加盟国の脱退まで公然と求めている。
今月には、赤根智子ICC所長と、イスラエルに関する捜査を指揮してきたセネガル出身のアブドゥライ・セイェ上級公判弁護士が新たに制裁対象に加えられた。
WSJによると、こうした制裁はICCの実務にも実質的な打撃を与えている。
米マイクロソフト(MS)の「Office」の利用が制限されたことで、ICCは性能面で劣るドイツ製のオープンソースシステムへの切り替えを余儀なくされ、業務効率の低下につながっているという。
逮捕状の執行を巡っては、加盟国の間でもICCから距離を置く動きが目立っている。
モンゴルとタジキスタンはICC加盟国でありながら、プーチン大統領に対する逮捕状の執行を拒否した。プーチン大統領は両国を訪問し、通常の国家元首として歓迎を受けた。
ベネズエラとチャドは7月末、ローマ規程からの脱退を国連(UN)に通告した。
ブルキナファソ、マリ、ニジェールの3カ国も昨年末に脱退方針を表明し、今年6月に正式な通告を済ませた。ICCからの脱退は、通告から1年後に発効する。
一方、米国、中国、ロシア、インド、イスラエルなどは、そもそも1998年に採択されたローマ規程に加盟しておらず、ICCの加盟国ではない。
ハンガリーでは、ビクトル・オルバン政権が昨年4月、ネタニヤフ首相に対する逮捕状の執行を拒否し、同首相夫妻の訪問を歓迎した後、ICCから脱退する意向を表明した。
脱退は今年6月初めに発効する予定だったが、4月の総選挙で政権が交代したことを受け、新政府と議会が5月末に脱退決定を撤回し、加盟国としての地位が維持された。
欧州の他の国々でも、ネタニヤフ首相が訪問した場合に逮捕状を執行するかどうかを巡り、難色を示したり異論を唱えたりする動きが続いている。
ICCは2023年3月、プーチン大統領とロシア大統領府のマリア・リボワ=ベロワ子どもの権利担当大統領全権代表に対し、占領地域の子どもを違法に移送・追放した戦争犯罪の疑いで逮捕状を発付した。
翌2024年11月には、ガザ地区での戦闘を巡り、ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前イスラエル国防相に対して、戦争犯罪と人道に対する罪について責任があるとして逮捕状を発付した。
当時、人権団体からは、ICCがアフリカの独裁者や軍閥だけでなく、ロシアやイスラエルといった国の指導者にも責任を問うようになったとして歓迎する声が上がっていた。
一方、ICCが設立から24年間で有罪判決を言い渡した被告14人が、全員アフリカ諸国の出身者だったことから、「選択的な正義」だとの批判も根強い。
このうち9人は戦争犯罪または人道に対する罪で有罪判決を受け、残る5人は証人の買収や懐柔など、比較的軽い罪で有罪となった。
ICCの信頼性を巡っては、内部で相次いだ不祥事も影を落としている。
ICCの最高位の検察官である主任検察官を務めたカリム・カーン氏は、女性補佐官に対し数カ月にわたって性的な嫌がらせを行ったとの疑惑が浮上していた。
1年半以上にわたる調査と論争を経て、ICC加盟国は先月、投票によりカーン氏を解任した。


