「アニメの舞台が観光資産に」セーラームーン、エヴァ、SLAM DUNK…海外ファンを呼び続ける理由
外国人による4,700億円の消費に期待

東京港区の麻布氷川神社には今も海外から「美少女戦士セーラームーン」ファンが訪れ続けている。1992年に放送を開始した「セーラームーン」で、登場キャラクターが巫女として働く「氷川神社」のモデルとして知られる場所だ。アニメの鳥居と実際の神社の姿が似ているため、ファンの間で代表的な「聖地」として定着した。
このように、アニメの舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」が、日本の地域経済を支える観光産業として成長している。海外ファンも多数訪れ、宿泊や外食、ショッピングなど地域消費を押し上げる効果も大きくなっている。
代表的な成功例が神奈川県の箱根だ。1995年に放送を開始した「新世紀エヴァンゲリオン」では、箱根一帯が作品中の「第3新東京市」のモデルとして登場する。箱根町と観光協会はこれを地域観光資源として積極的に活用してきた。2009年に作品に登場する19か所を紹介した「エヴァンゲリオン箱根補完地図」を配布すると、わずか3日間で4,000人のファンが集まった。海外からの問い合わせが相次ぎ、英語版の地図も制作された。箱根町は現在も仙石原などを中心に、エヴァンゲリオンと連携した観光・まちづくり事業を展開している。
鎌倉も世界的なアニメ聖地として知られる。江ノ電「鎌倉高校前駅」近くの踏切は、「SLAM DUNK」アニメのオープニングに登場した場所のモデルとして有名だ。2022年の映画「THE FIRST SLAM DUNK」のヒット以降、日本だけでなく海外ファンの訪問も増加した。海を背景に江ノ電が通るシーンを撮影しようとする観光客が集まり、作品が終了して数十年が経過した後も、観光客を引き寄せるコンテンツとして機能し続けている。
日本でアニメ聖地巡礼が大衆的な観光形態として定着した決定的なきっかけは、2016年に公開された新海誠監督の「君の名は。」だった。この作品は日本で興行収入251億円を記録し、ファンが作品の舞台を直接訪れる現象が社会的なブームとなった。「聖地巡礼」という表現も、その年の日本流行語大賞トップ10に入った。
経済効果も無視できない。日本内閣官房の2017年資料を基にした推計によれば、訪日外国人のうちアニメ聖地巡礼客は年間約140万人に達する。関連商品購入額だけで380億円規模だ。潜在需要は約310万人と推計され、宿泊や飲食、ショッピングを含めると、日本国内の消費支出は4,700億円に達する見込みだ。
地方自治体もアニメを観光客誘致の手段として積極的に活用している。群馬県は2024年度から、県内で映画・ドラマ・アニメを制作する場合、スタッフの宿泊費など制作費を最大2,000万円まで支援している。福岡市も地域を作品の舞台に取り入れてもらうため、作品ごとに最大1,000万円の食費や宿泊費などを補助している。
地域観光業界が直接、聖地巡礼需要を観光コンテンツに発展させる事例も増えている。アニメ「花咲くいろは」の舞台として知られる金沢市湯涌温泉は、作品中の仮想祭り「ぼんぼり祭り」を実際のイベントとして開催した。訪問客が多い年には約1万5,000人が集まり、現在も毎年イベントが開催されている。
日本アニメツーリズム協会は、海外ファン層の拡大とともに、自治体と企業の協業も急速に増えていると報告している。セーラームーンからエヴァンゲリオン、SLAM DUNKまで、数十年前の作品の舞台が今なお観光客を引き寄せ、アニメが単なるコンテンツを超えて、地域の長期的な観光資産として進化しているとの評価が出ている。
