「2029年度までに100両」西武が中古電車を大量導入 新車より再利用を選ぶ理由

ある時代を走った列車が廃車場ではなく、他社の路線や海外に売られる事例が国内で増えている。古い車体は宿泊施設やホテルの客室に改造され、取り外した部品はバッグや小物として再販される。新車購入費を節約したい鉄道会社、観光客を引き付けるコンテンツを必要とする地域、旧型車両を求めるファン層の利害が一致した結果だ。
30日の日本経済新聞は、西武鉄道が小田急電鉄や東急電鉄から中古車両を購入し、自社路線用に改造する「サステナ車両」事業を拡大すると報じた。2029年度までに両社から計100両程度を買い取る計画だ。大手鉄道会社同士でこの規模の中古車両取引は珍しいと会社側は説明している。
海外輸出も盛んだ。タイではJR北海道が使用していたキハ183系と14系客車が観光列車に改造され運行中で、4月からはJR五能線などで引退したキハ40系が通勤列車として導入された。昨年11月に開催されたタイ鉄道ツアーは60名募集の予定だったが、参加費約2万円にもかかわらず大学生から70代まで約120名が集まった。
日本国内では、長野電鉄が代表例として挙げられる。現在運行中の車両全てが首都圏で使用されていた中古で、小田急電鉄のロマンスカーを譲り受けた特急「ゆけむり」、JR東日本の成田エクスプレス、東急電鉄8500系などが路線を走っている。48年間東急線を走った8500系を撮影するため長野まで訪れるファンもいるほどだ。西武鉄道が6月に埼玉県日高市の車両基地で開催した旧東急電鉄車両撮影会も参加費7,700円に約100名が申し込み、イベント全体の来場者は8,300名に達した。
商業的リサイクルも定着してきた。千葉県市原市の「高滝湖グランピングリゾート」は、小湊鉄道で57年間走った「キハ203」を宿泊施設に改造し、夏季の予約が満員になる人気を誇っている。大阪のヴィアイン新大阪ウエストは2027年に引退予定のJR西日本500系新幹線の座席とテーブルをそのまま移設した客室を運営中で、来年3月まで予約がほぼ埋まっている。大阪の縫製業者サンワードは、大阪メトロ・阪急電鉄など16社の廃部品でバッグやスマートフォンスタンドを作って販売している。
ファンが自ら保存に乗り出すケースもある。千葉県いすみ市の鉄道車両テーマパーク「ポッポの丘」に展示されている車両34両のうち16両はファンが作った保存会を通じて導入された。ある保存会は旧国鉄583系食堂車を守るためにクラウドファンディングで約2,000万円を集め、2024年に青森から千葉まで車両を移動させた。
日本経済新聞は鉄道ファンが趣味に使う金額を年間1,000億〜1,500億円と推定し、これは車両・信号など関連産業市場規模の3分の1から半分に達する数字だと分析した。ただしこの推定は2010年の調査に基づくもので、その後更新された公式統計は確認されていない。
200社以上の鉄道会社が異なる車両と路線を運営する日本特有の産業構造が、このリサイクル市場を支えているという分析だ。人口減少と自動車利用拡大で地方鉄道の経営難が深刻化する中、古い車両をリサイクルする動きが新たな収益源として定着しつつある。


