ペルー、氾濫危険の氷河湖528カ所 決壊なら12万人都市へ1時間足らず

南米のアンデス山脈で氷河の融解が加速し、氷河湖の決壊による大規模な洪水や土砂災害の危険性が高まっている。ペルーでは528カ所の湖に氾濫の恐れがあり、このうち58カ所が高リスクに分類された。
チリやアルゼンチンでも、氷河湖の拡大が飲料水や水力発電、鉱山などの重要インフラを脅かしている。
UPI通信などが1日(現地時間)に報じたところによると、アンデス山脈では気温上昇に伴って氷河の融解が進み、その融解水がたまって氷河湖が拡大している。
融解によって不安定になった岩盤斜面や氷壁が崩れて湖に流れ込むと、大量の水と土砂が一気に下流へ押し寄せる「氷河湖決壊洪水(GLOF)」が発生する恐れがある。
ペルーで528カ所に氾濫リスク
ペルー国立氷河・山岳生態系研究所によると、国内にある528カ所の湖が氾濫の危険を抱えており、このうち58カ所が高リスクに分類されている。
特に危険性が高いとされるのが、人口12万人以上の都市ワラスの上流にあるパルカコチャ湖だ。同湖には1,700万立方メートルを超える水がたまっている。
温暖化によって不安定になった氷河の一部が湖へ崩落すれば、大きな波によって天然の堤防が決壊し、氾濫流が1時間足らずで市街地に到達する可能性がある。
同地域では1941年にもパルカコチャ湖が決壊し、市街地の約3分の1が破壊され、数千人が死亡した。
チリの氷河2万6,000カ所、飲料水や電力に影響も
チリには2万6,000カ所を超える氷河が分布している。パタゴニアの奥地だけでなく、首都圏や中部地域の水力発電所、鉱山、数百万人に飲料水を供給するインフラがアンデス山脈の水系に依存している。
大規模な氷河崩壊や氷河湖の決壊が起きれば、電力供給や鉱業、飲料水の確保に深刻な影響が及ぶ恐れがある。
チリのアンドレス・ベヨ大学で地質学を研究するダリオ・オルメニョ教授は、現地ラジオのインタビューで「チリの氷河はヒマラヤに比べて規模が小さく、標高差も大きくないため、ネパールと同規模の災害が起きる可能性は低い」と説明した。
その一方で、「土砂災害そのものは、いつ発生してもおかしくない現実の脅威だ」と指摘した。
アルゼンチンでは3,100万立方メートルが流出
アルゼンチンでは2005年、サンフアン州のエリソス湖が決壊し、約67分間で3,100万立方メートルの水が流出した。氾濫は下流250キロ以上に及んだが、周辺にほとんど人が住んでいなかったため、人的被害は発生しなかった。
現在は、パタゴニアの観光都市エル・チャルテンなどが、トーレ湖をはじめとする氷河湖の決壊リスクにさらされている。ウプサラ氷河など、大規模な氷河の融解によって形成された湖も潜在的な脅威となっている。
2013年には、水圧と気温上昇の影響でウプサラ氷河付近の氷壁が崩落した。せき止められていた大量の水と氷の破片がオネリ湾へ一気に流れ込み、大きな波が発生した。
アルゼンチン国立科学技術研究評議会のフアン・パブロ・ミラナ研究員は、現地メディア「インフォバエ」の取材に対し、「ネパールで起きた悲劇と同様の災害は、南米でもすでに発生している」と強調した。
衛星とセンサーで早期警報網を強化
チリ政府は衛星画像やレーダーを活用して国家氷河データベースを定期的に更新し、氷河湖の拡大やアンデス山脈の斜面に生じた亀裂を検知している。
南米各国も衛星監視や水位センサーを利用した早期警報システムの整備を進めている。ただ、急速な決壊や大規模な氾濫に対応するには、既存の防災インフラは十分とはいえない。
専門家は、気温上昇を抑えられなければ、氷河湖の決壊による洪水や土砂災害が、主要都市のエネルギー網や飲料水供給、住民の安全を長期にわたって脅かすと警告している。
ミラナ氏は「継続的な監視と予防インフラが整備されなければ、山岳地帯から押し寄せる災害が、南米の主要都市における電力や飲料水の供給網、住民の命を脅かすことになる」と述べた。


