とうとう「身内同士の銃撃」…ウクライナ2大情報機関、首都で銃撃戦
HUR傘下のロシア義勇軍を巡るテロ計画の捜査が発端 SBUとHURの内部対立が表面化 ゼレンスキー氏、真相究明を指示 SBU幹部を解任

ロシアとの戦闘が続くウクライナで、主要情報機関の要員同士が首都キーウで互いに銃撃戦を繰り広げるという異例の事態が起きた。情報機関同士の捜査範囲や主導権を巡る対立が武力衝突にまで発展し、ゼレンスキー政権の安全保障部門内部での権力争いが表面化したとの見方が出ている。
キーウ・インディペンデント(KI)やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などによると、2日(現地時間)、キーウでロシア連邦保安局(FSB)によるテロ計画を捜査していたウクライナ保安庁(SBU)の職員と、国防省情報総局(HUR)の職員との間で銃撃戦が起きた。HURの職員3人が負傷し、このうち2人が重傷を負ったと伝えられている。
SBUは、ロシアの情報機関が、親ウクライナ派のロシア義勇軍(RVC)で副司令官を務めるステファン・カプルノフ氏を狙ったテロを計画していた兆候を把握し、捜査していた際に銃撃戦が起きたと明らかにした。検察総長室によると、SBUの職員は「捜査中、ウクライナ国防軍の部隊の一つから攻撃を受けた」とし、「武装した相手の抵抗を制圧する過程で武器を使用した」と主張した。
一方、HUR特殊部隊「ティムール」の指揮官は、SBUが非武装のHUR職員に先に発砲したと反論した。
RVCは、ウクライナ側で戦うロシア人で構成される準軍事組織で、HURの指揮下にある。
HURは、カプルノフ氏が先月24日のウクライナ独立記念日にウクライナに滞在していた際、昼間に自宅の庭で身元不明の人物に連れ去られ、何の容疑もかけられていないまま拘束されたと主張した。カプルノフ氏の弁護士は、SBU特殊部隊「アルファ」の職員が裁判所の令状なしに同氏の自宅を夜間に捜索したと述べた。カプルノフ氏はその後解放されたが、現在の所在は分かっていない。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は徹底した真相究明を指示し、人事措置などを通じて責任を問う考えを示した。ゼレンスキー氏は「ウクライナでは、ロシアの占領軍に向けて銃を撃てるのは、国を守るためだけだ」とし、「それ以外の銃撃戦は一切容認しない」と強調した。
その後、ゼレンスキー氏はSBUの国家機密保護局長、オレグ・フラモウ氏を解任した。
HUR長官を務めた経歴を持つキリーロ・ブダノフ大統領府長官も、「徹底した公正な調査」を求めた。
今回の事態は単なる捜査過程の衝突にとどまらず、ウクライナの情報機関同士による主導権争いが表面化したものとの見方が出ている。WSJは、SBUとHURの間には根深い対立があり、今回の銃撃戦がその対立を浮き彫りにしたと分析した。

特に、今年1月にゼレンスキー氏が安全保障部門の組織改編を行って以降、両機関を巡る権力構図も大きく変化した。
当時、ゼレンスキー氏は、2020年からHURを率いていたブダノフ氏を大統領府長官に抜擢した。ブダノフ氏の後任にはオレフ・イヴァシチェンコ氏が就任し、HURを率いることになった。ブダノフ氏はゼレンスキー氏の側近とみられている。
一方、SBUではヴァシル・マリュク氏が1月に長官を退任した後、7月にオレクサンドル・ポクラド氏が長官代行に任命された。最近では、ウクライナメディアがブダノフ氏とポクラド氏の間で緊張が高まっていると報じていた。
ブダノフ氏はHUR長官を退任したものの、HUR内部には依然として同氏の影響力が残っているとの見方もある。WSJは、HURの一部の精鋭部隊が前長官のブダノフ氏に今も忠誠を誓っていると指摘した。
HURとSBUの衝突は、今回が初めてではない。
2022年3月、HURで活動していた銀行家のデニス・キレーエフ氏が、キーウで頭部を銃撃され死亡した。当時、キレーエフ氏はロシアによるウクライナ侵攻計画に関する情報を入手した人物とされていた一方、反逆罪やロシアの二重スパイではないかとの疑いも持たれていた。
当時HUR長官だったブダノフ氏は2023年、キレーエフ氏がロシアのために活動していたとの疑惑を否定し、SBUの職員に殺害されたと主張した。ウクライナ大統領府は同年、キレーエフ氏の死亡について、侵攻初期に情報機関同士の連携が不足していたことが原因だったと明らかにした。
