「6.7兆円投資でも、まだ買う」バフェット後継者が日本5大商社を買い増す理由
日本企業6社に約6兆9,000億円投資
長期金利3%でも「根本的な問題ではない」
世界のサプライチェーンにバークシャーの資金力を組み合わせる

「投資の達人」と呼ばれる米国のウォーレン・バフェット氏の後継者で、バークシャー・ハサウェイ最高経営責任者であるグレッグ・アベルCEOが、日本の5大総合商社の株式を追加取得し、共同M&A(合併・買収)と事業投資を拡大する方針を明らかにした。約6兆7,000億円に上る投資待機資金を活用し、日本企業を単なる株式投資先からグローバル事業のパートナーへ格上げする戦略だ。
アベルCEOは3日、東京で日本経済新聞(日経)のインタビューに応じ、「総合商社の持ち株比率を引き続き高めていくことがわれわれの目標だ」とし、「オマハに戻って状況を見守った後、持ち株比率を引き上げるべきだと判断すれば、そうする」と語った。
アベルCEOは「5大総合商社と東京海上ホールディングスなど6社と協力し、投資機会の発掘を促進する」とした上で、「これはバークシャーの成長にとって絶好の機会だ」と強調した。日本企業との協力については、バークシャーの資本力と日本企業の事業発掘能力を組み合わせた「完璧な組み合わせ」と評価した。
バークシャーは三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅の株式をそれぞれ10%超保有している。東京海上ホールディングスを含む日本企業6社の保有株式は、先月28日時点で約440億ドル(約6兆8,800億円)に達する。一つの投資先群として見ると、アルファベットやコカ・コーラの保有額を上回る。日本は米国を除けばバークシャー最大の投資先だ。
バークシャーが保有する現金と米国短期国債は、6月末時点で3,655億ドル(約57兆円)に上り、トヨタ自動車の時価総額も上回る。
バフェット氏が昨年5月に退任の意向を明らかにして以降、バークシャーの株価が米国のS&P500指数の上昇率を大きく下回る中、アベルCEOは積み上がった現金を投資に振り向け、成長の原動力を確保しようとしているとみられる。
アベルCEOが就任後初めて日本を訪れ、5大総合商社と東京海上ホールディングスの経営陣に相次いで会ったのも、協力関係を事業分野へ広げるためだ。総合商社各社は今回の会談で、さまざまな業種にわたる具体的な共同投資事業を提案したと日経は伝えた。
「ラーメンからミサイルまで」…世界のサプライチェーンが資産
バークシャーが日本の総合商社に投資した最大の理由は、「選択と分散」という事業構造にある。総合商社はエネルギーや原材料から食品、流通、インフラまで、世界各地のサプライチェーンに参画している。5大総合商社が海外に派遣している駐在員だけでも約5,000人に上る。事業が分散しているため、特定業種の不振を別分野で補うことができ、世界各地の情報や投資機会も迅速に確保できる。
こうした構造はバークシャーとも似ている。保険、鉄道、エネルギー、製造業など多様な事業を抱えるバークシャーは、安定したキャッシュフローを基盤に長期投資を行う。総合商社もまた、貿易仲介会社から、資産を売買して収益を高める「ポートフォリオ・マネージャー」へと変貌した。
アベルCEOは、日本企業の強みとして経営の質も挙げた。「日本企業の非常に質の高い経営体制に強い信頼を寄せている」と語った。総合商社が利益の増加とともに配当や自社株買いを拡大してきたことも、長期投資の背景にある。バークシャーが投資を開始して以降、5大総合商社の時価総額の合計は約5倍に増えた。
日本への投資には、米国に集中しているバークシャーの事業・株式ポートフォリオを地域的に分散する効果もある。バークシャーは中国の電気自動車(EV)メーカーBYDの株式を昨年までに全て売却した。2022年に購入した台湾のTSMC株も、台湾海峡の地政学的リスクを理由に数カ月で全て処分した。バークシャーが中国や台湾より相対的に安定した日本企業を長期的なパートナーに選んだとの分析が出ている。
金利3%でも円建て債発行…共同M&Aを拡大
バークシャーによる日本の総合商社への投資は、株式価値の上昇と配当を狙う財務的投資から、共同事業へと進化している。
伊藤忠商事は、バークシャー傘下の米国衣料企業のアジア事業で協力している。住友商事は、米国で確保した天然ガスをバークシャー傘下の設備で液化天然ガス(LNG)にした後、販売している。東京海上ホールディングスとは共同M&Aを推進する計画だ。総合商社の世界的な人脈と事業発掘能力に、バークシャーの資金力と信用力を組み合わせる構図だ。
日本の金利上昇も投資拡大の障害にはならない見通しだ。バークシャーはこれまで、円建て社債を発行して調達した資金で総合商社株を買い進めてきた。日本国債10年物の利回りが30年ぶりに年3%を超え、社債の調達コストも上昇したが、アベルCEOは「発行者の観点から見れば、3%程度の金利は十分に吸収できる」と述べた。
アベルCEOは「今後も円建て債を発行し、さまざまな投資のための資金調達手段として活用する」と語った。総合商社からの配当収益と共同事業を通じた企業価値上昇の可能性を考慮すれば、増加した調達コストを負担できるとの判断だ。
日本の他の上場企業への新規投資の可能性も残している。ただし、アベルCEOは「東京証券取引所の上場企業全体ではなく、厳選した少数の企業に焦点を当てている」と述べた。日本のマクロ経済や政策よりも、個別企業の事業モデルや経営水準を基準に投資先を選ぶという意味だ。
一方、同日のアベルCEOによる追加取得発言を受け、総合商社株は一斉に上昇した。東京証券取引所では三菱商事が一時4.48%急騰し、伊藤忠商事、丸紅、三井物産、住友商事もそろって上昇した。
AI・半導体株から相対的に割安なバリュー株へ資金が移動する中、いわゆる「バフェット効果」が再び注目されているとの分析だ。
