「利下げしなければ貿易停止」…経済の常識に挑むトランプ大統領
対米黒字国まで標的に「強い国ほど低金利」と主張…金融政策と信用力を結びつけ、貿易赤字を「富の流出」と捉える

ドナルド・トランプ米大統領は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに応じなければ、一部の国との貿易を停止する可能性があると主張した。高金利によって米国が「不公平な立場」に置かれているとも述べた。16日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利決定を前に、FRBに利下げを要求するとともに、従来からの貿易赤字を巡る持論と結びつけたものだ。
FRBへの利下げ圧力強まる
トランプ大統領は4日(現地時間)、雇用統計が市場予想を大きく上回ると、「トゥルース・ソーシャル」への投稿で「米国の信用力ははるかに強くなった」として「金利を引き下げろ」と要求した。「強い国ほど金利は低くあるべきだ」と述べ、「非常に単純だ」と主張。さらに「米国は『昔のように』世界で最も低い金利水準であるべきだ」と語った。
米労働統計局(BLS)は同日、非農業部門雇用者数が前月比16万2,000人増加したと発表した。市場予想を大きく上回る水準だった。
さらに、トランプ大統領は米国の貿易赤字問題を金利と結びつけた。「米国が彼ら(外国)の莫大な貿易黒字を容認しなければ、彼らはもはや金融エリートとは見なされないだろう」と述べ、「金利を下げなければ、貿易赤字を抱える国々との貿易を停止する」と警告した。米国はサービス貿易ではおおむね黒字を計上している一方、商品貿易では日本、韓国、中国などに対して赤字を抱えている。
信用力と金融政策を混同
トランプ大統領は第1次政権時代から一貫してFRBに利下げを要求してきた。しかし、その論理は次第に飛躍している。米国債利回りが国家の信用力と関連しているのは確かだが、中央銀行の金融政策は国債利回りを引き下げること自体を目的とするものではなく、景気変動を抑えるための仕組みだ。
個人や企業の信用力が高まれば貸出金利が低下するのは、債務不履行のリスクが低下するためだ。一方、中央銀行は資金を借りる主体ではなく、通貨を発行する主体であり、現代の金融政策では市場の過熱を抑えるために利上げが主要な手段の一つとして用いられている。
トランプ大統領は貿易収支についても、数十年にわたり、貿易赤字は金を奪われることであり、黒字は金を得ることだという「ゼロサムゲーム」の考え方を示してきた。したがって、米国がこれまで商品貿易で赤字を出してきたのは、他国が米国を搾取した結果だというわけだ。米国が黒字を計上しているサービス貿易については言及していない。
1980年代から、トランプ大統領はこうした内容の広告を新聞紙面などに掲載し、是正を求めてきた。しかし、貿易赤字は米国への資本流入と消費・投資の活性化を意味する。また、対米貿易黒字国は米国債の主要な買い手でもある。
同日のトランプ大統領の発言は、政策金利が低ければ「金融エリート」であり、貿易は相手国の金を奪う過程だという二つの考え方を組み合わせたものだ。「我々には、いわゆる『金融エリート国家』として、はるかに低い金利を享受する権利がある」と述べ、「ある国々は0.5%の金利を払っているのに、我々は4%を払っている。しかし我々は彼らよりはるかに強い信用を持っている」と主張した。
対米貿易黒字国の金利が低いのは、米国との貿易で黒字を出しているためだとも説明した。さらに「我々がそうした国との貿易赤字を減らすには、彼らと貿易しないことだけだ」と繰り返した。トランプ大統領はこれに関連して日本、スイス、カナダなどを挙げたことがあり、韓国も同じ範疇に含まれる。
貿易を「ゼロサムゲーム」と捉える
トランプ政権の関係者らは、大統領の誤った経済認識を正すのではなく、同調する姿勢を見せている。JD・バンス米副大統領は同日のホワイトハウスでの記者会見で「トランプ大統領が金利を重視しているのは、米国民が住宅を購入できるようになることを望んでいるからだ」と述べ、「FRBは金利を引き下げるべきだと考えている」と語った。
バンス副大統領は、それが最近の米国の物価上昇データに対する「FRBの適切かつ責任ある対応」だとの認識を示した。7月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.4%上昇し、個人消費支出(PCE)物価指数も3.7%上昇した。物価上昇率はFRBが目標とする2%を大きく上回る水準にある。
ケビン・ハセット米国家経済会議(NEC)委員長は「FRBの独立性を尊重するが、金利据え置きを求める主張はかなり強力になるだろう」と付け加えた。
