「利下げする状況では全くない?」…各国中央銀行で「ドミノ利上げ」の兆し

先週の欧州中央銀行(ECB)に続き、今週は米国と日本の中央銀行でも利上げ観測が強まっている。背景には、中東での戦争によるエネルギー価格の上昇や、人工知能(AI)ブームに伴うコストの急増が再び物価を押し上げていることがある。主要国の金融引き締めは世界の金融市場に衝撃を与えるだけでなく、新興国で相次ぐ金融引き締めにつながる可能性もあり、その影響が注目されている。
日米中央銀行の変わった思惑
米連邦準備制度理事会(FRB)が16日(現地時間)に政策金利を引き上げれば、2023年7月以来、3年ぶりの利上げとなる。米国のケビン・ウォーシュFRB議長は先月のジャクソンホール会議で「物価がFRBの目標である2%に十分な速さで低下しなければ、必要な措置を取る」と述べ、利上げを強く示唆した。
戦争や関税、エネルギー価格の急騰で物価上昇がなかなか収まらない中、FRB内でも利上げを主張する「タカ派」の声が強まっている。実際、7月会合ではすでに3人の委員が利上げを求めて反対票を投じた。
市場では、FRBが9月に利上げする確率を87.3%とみている。これを受け、米10年国債利回りも5%に迫る4.97%まで急上昇した。さらに12月にも再び利上げする可能性があるとの見方が出ている。金融専門家のダイアン・スウォンク氏は「今や市場の関心は利上げするかどうかではなく、物価を抑えるために金利をどこまで引き上げなければならないかに移った」と評価した。
長期間にわたり超低金利を維持してきた日銀も、政策金利を現在の1%から1.25%に引き上げ、1995年以来31年ぶりの高水準とすることが確実視されている。6月の利上げからわずか3か月で再び引き上げるという速いペースだ。
日銀の増一行審議委員は最近の懇談会で「金利が物価上昇率を下回り、実質金利がマイナスとなっている状態を終わらせ、中立金利(1.1~2.5%)の範囲内まで政策金利を確実に引き上げなければならない」と述べた。その上で「そうしなければ企業の過剰投資が集中し、不動産価格が急騰する可能性がある」と警告した。
一方、金融引き締めが本格化すれば、円キャリートレードが解消される可能性も高まる。円キャリートレードとは、低金利の円を借りて海外資産に投資する取引を指す。金利が上昇すれば投資資金を引き揚げる動きが広がり、別の資産市場にも衝撃が波及する可能性がある。
「金融政策転換への期待が後退」
日本や米国のような主要国が利上げすると、他国も追随を迫られる「ドミノ利上げ」が起きる。日米の金利が上昇すれば、世界の資金がより金利の高い両国に流れ、他国では自国通貨の価値が急落したり、外国人投資家の資金が流出したりする恐れがあるためだ。
11日、モルガン・スタンレーMUFG証券は報告書で「日銀が9月会合で政策金利を1.25%に引き上げ、米FRBがタカ派的な金融引き締め姿勢を固めた場合、世界の債券市場で金利の上限が押し上げられざるを得ない」と分析した。BNPパリバのポール・ホリングスワース首席エコノミストも「ECBの利上げと日米両国の同時金融引き締めは、ピボット(金融政策転換)への期待を後退させた」と指摘した。さらに「先進国で金融引き締めが加速すれば、新興国や英国など他の中央銀行も、資本流出と通貨価値の下落を防ぐための『対応的な利上げ』を迫られる」と予想した。
英国をはじめ、ブラジル、台湾、パキスタン、ウクライナなど10か国余りが今週相次いで利上げした場合、自国通貨の価値を守るための「生存型の為替防衛」措置に近い。英国は17日に政策金利を決定する。主要国の中央銀行による同時利上げは物価を抑えることを目的としている一方、金利負担の増加によって個人消費や企業投資が縮小し、世界経済が冷え込むリスクも抱えている。
