英国からの訪日客48万人、前年比24.8%増 SNSと円安が若者呼ぶ
英国からの訪日客48万人、前年比24.8%増 SNSと円安が若者呼ぶ

マイトリー・サンビさんが日本へ行きたいと思ったきっかけは、SNSに投稿された日本旅行の写真だった。
Instagramを開けば、20代後半の誰かが日本を訪れたという投稿が目に入る。今では珍しい光景ではない。
「TikTokやInstagramを見ていると、セブン‐イレブンでさまざまなスキンケア製品を試したり、菓子や人気のサンドイッチ、飲み物を味わったり、有名店を訪れたりする動画が必ず目に入る」
日本を3回訪れたアレックス・ベイカーさんは、そう語る。
英国の若者の間で、日本が旅行先として注目を集めている。
観光庁の資料によると、2025年に日本を訪れる英国人旅行者は48万3157人で、2024年から24.8%増加する見通しだ。旅行業界が新型コロナウイルス流行前との比較基準とする2019年と比べると、40.8%増となる。
2026年の暫定値でも、増加傾向が続いている。新型コロナの流行後、訪日客全体が急増したことを反映しており、2025年の訪日外国人数は過去最多となる見通しだ。
取材に応じた20~30代の英国人は、日本を訪れたい理由として、街並み、食事、アニメ、自然、歴史、ゲーム、寺社など、さまざまな魅力を挙げた。一方、SNSが若者を日本旅行へ向かわせる最大の原動力になっているという点では意見が一致した。
サンビさん(24)は「TikTokを見ていると、日本の投稿がずっと目に留まっていた」と語る。それが今年初め、恋人と3週間の日本旅行に出かけた大きな理由だった。
「SNSで日本の写真を見て、また行きたくなった」

TikTokやInstagramで「#japantravel」と検索すると、富士山や湯気の立つラーメン、旅行日程の提案、日本アルプスの小さな集落、京都・伏見稲荷大社の鳥居、大阪・道頓堀のネオン、渋谷スクランブル交差点の人混みなど、数え切れないほどの動画が表示される。
「他の人が投稿した日本旅行の動画を見たことが、日本へ行く決め手になった」
アデン・イブラヒムさん(29)はそう話す。
イブラヒムさんは7月に友人と日本を訪れて以来、旅行動画を数十本TikTokに投稿し、1年以上たった現在も投稿を続けている。「日本旅行、グループチャットの計画がついに実現」と説明を添えた動画は、110万回再生された。
円安で高まる日本旅行の割安感
日本旅行は決して安くない。格安航空会社を利用する場合でも、閑散期の往復航空券は、中国経由で約450ポンド(約9万7,000円)からとなる。
ただ、円安によって現地での旅行費用には割安感が生まれている。日本国内の物価は上昇しているものの、7月には円相場が40年ぶりの安値を記録した。
「日本では3~4ポンド(約650~870円)で、人生が変わるほどおいしいラーメンを1杯食べられる。それなのに英国では、おいしくないラーメンに20ポンド(約4,300円)も払わなければならない」
TikTokに飲食店の評価を投稿し、昨年日本を訪れたペイ・ジャワードさん(26)はそう語った。
今秋に日本旅行を計画しているビベック・ハリアさん(26)も、「円が安くなり、『今が旅行のチャンスだ。物価も安いだろう』と思った」と話す。
日本文化への関心から数年前より訪日を希望していたハリアさんは、日本語を学び、日英両国の合唱団でも歌っている。それでも、円安によって日本旅行がさらに魅力的になったと付け加えた。
現地での割安感から、多くの旅行者が土産物を大量に購入している。日本で買ったさまざまな味のキットカットや文房具、衣類などを紹介する動画も、SNSで人気を集めている。
サム・コベットさん(23)は5月の日本旅行で、菓子や抹茶、衣類、スキンケア製品などを買いすぎたため、新たに旅行かばんを購入して詰め込むことになった。どの商品も「本当に安かった」という。
東京・京都・大阪を巡る「ゴールデンルート」
取材に応じた英国人の多くは、東京、京都、大阪を巡る、いわゆる「ゴールデンルート」を選んでいた。奈良や広島、富士山などへ日帰りで足を延ばすケースも多かった。
このルートが選ばれる理由は分かりやすい。都市間の移動が便利で、主要な観光名所が集中しているためだ。
一方、一部の旅行者によるマナー違反への不満から、オーバーツーリズム(観光公害)を巡る議論も広がっている。
日本ガイド協会の観光ガイド、和泉千雪さんは、ここ数年で旅行者のマナーが悪化したと感じている。自身の顧客は礼儀正しいというが、バスの列への割り込みや、大きな旅行かばんによる座席の占有、京都の竹林で木に自分の頭文字を刻む行為、深夜の騒音、立ち入り禁止区域での撮影などを目にしたという。
対策に乗り出す自治体も出ている。富士山に近い山梨県富士河口湖町は、旅行者による無秩序な行動を巡る問題が繰り返されたことから、今年の桜祭りを中止した。
渋谷スクランブル交差点がある東京都渋谷区は、6月からごみのポイ捨てに対し、その場で過料を科す取り組みを始めた。
7月には国際観光旅客税が1,000円から3,000円に引き上げられた。この税金は通常、出国者の航空券や乗船券の料金に含まれている。政府は税収を公共交通機関の改善や史跡の修復などに充てるとしている。
SNSで人気の観光地に旅行者が集中

主要都市の混雑に驚く旅行者もいる。
「混んでいるとは思っていたが、ここまでとは思わなかった」
21歳の誕生日を祝うため、友人と11月に日本を訪れた熱心なアニメファン、ミリー・ドリングさんはそう語った。
東京ディズニーシーは非常に混雑しており、ドリングさんと友人は、3時間待ちのアトラクションに1つ乗るのが精いっぱいだった。人混みにも圧倒されたという。
コベットさんは、観光名所に人が集中する理由の一つとして、SNS上の過度な宣伝を挙げた。オンラインで人気だという理由だけで訪れた場所もあり、後悔していると話す。
SNSで何度も見かけた京都のデザート店を訪れたが、「列に並んでいる人の中に地元の人は一人もいなかった」という。
箱根の鳥居や嵐山の竹林にも、Instagramに投稿するための完璧な写真を撮ろうとする旅行者が大勢押し寄せていたと話した。
ただ、観光地のにぎわいそのものを魅力と感じる旅行者もいる。
「ここ数年、観光客だと思われることを避けようとする、少し気取った風潮が生まれたように感じる」
11月に東京と大阪で2週間の新婚旅行を予定しているロラ・マクグリガーさん(29)はそう語った。
ディズニーランドとユニバーサル・スタジオ・ジャパンを訪れるほか、大相撲の観戦、富士山と広島への旅行、東京でのゴーカート体験を計画している。
「もちろん日本の本当の姿を体験したい。でも、自分が観光客であることも受け入れて、一緒に楽しみたい」


