トランプ大統領が総動員を呼びかけるも…激戦区60人中、出席確定はわずか4人
1982年以来初の中間選挙前の党大会…トランプ大統領中心の政治集会 トランプ大統領・ヴァンス副大統領がそろって参加…共和党指導部と候補者に温度差 激戦区候補、トランプ大統領と距離…選挙区の有権者への訴えに注力

ドナルド・トランプ米大統領が11月3日の中間選挙を前に共和党支持層の結集に乗り出しているが、肝心の民主党候補と接戦を繰り広げる共和党候補の多くは、9日(現地時間)にテキサス州ダラスで開幕する中間選挙前の党大会を欠席する見通しだ。
CBSニュースによると、トランプ大統領にとって今回の党大会は、自身の政権2年間の実績をアピールし、共和党候補を支援する政治的な舞台だという。一方、激戦区の候補にとっては、トランプ大統領との距離が近すぎることが、中道層の有権者を取り込むうえでかえって重荷になりかねないとの判断が働いていると分析されている。
CBSニュースが、激戦地で知事選、上院選、下院選に出馬する候補60人を対象に出席の有無を確認したところ、出席を確定した候補はわずか4人だった。
5人は欠席する意向を示し、51人は回答しなかった。共和党全国委員会(RNC)は別途、20人以上の候補者が党大会で演説する予定だと明らかにした。
最大の理由として挙げられるのが、トランプ大統領の支持率だ。CBSニュースが7月末に実施した世論調査では、トランプ大統領の支持率は39%で、3月から5ポイント低下した。
過去の中間選挙では、現職大統領の所属政党が議席を減らすケースが多い。トランプ大統領の政権運営に対する支持率が低下する中、民主党と激しく競り合う候補がトランプ大統領や共和党の全国レベルの政治に過度に寄り添えば、かえって支持の裾野を広げるのが難しくなるということだ。
特に激戦区の候補にとっては、トランプ大統領の熱烈な支持層よりも、選挙区の中道層や無党派層の有権者が重要となる。トランプ大統領の政策や政権運営を巡って評価が分かれる中、全国規模の政治イベントに参加するよりも、選挙区の課題への対応や有権者との接点を重視する方が選挙に有利だとの判断だ。
実際、欠席を決めた候補らは、選挙区での選挙運動を理由に挙げている。
ペンシルベニア州選出のブライアン・フィッツパトリック米下院議員(共和党)は「われわれの有権者は地元にいる」と述べ、党大会には出席しない考えを示した。フィッツパトリック議員は、予算や家庭生活、事業、医療など、有権者が実際に直面している困難に耳を傾けることが重要だと強調した。
フロリダ州選出のマリア・エルビラ・サラザール米下院議員(共和党)も「私は自分の選挙区にいなければならない。選挙運動をしなければならない」とし、「ワシントンやダラスでは誰も私に投票しない。私はマイアミにいなければならない」と語った。
党大会への出席にかかる費用と時間も、候補者にとって負担となっている。下院共和党の資金調達組織である全国共和党下院委員会(NRCC)は当初、出席を希望する議員に2万5,000ドル(約384万1,000円)を寄付するよう求めていた。その後、議員やスタッフ向けに無料チケット2,000枚を配布したものの、選挙まで2カ月となった候補者にとっては、ダラスに滞在する時間そのものが負担になり得る。
RNCが寄付者向けに高額な寄付パッケージを用意したことも物議を醸した。CBSニュースによると、RNCは党大会の招待券が含まれる1万5,000ドル(約230万4,000円)のパッケージから、VIPイベントが含まれる15万ドル(約2,304万5,000円)のパッケージまで用意した。
今回のイベントが米テキサス州のケン・パクストン司法長官を支援するための場のように映るとの一部共和党関係者の不満も、候補者の参加意欲をそぐ要因として挙げられている。
パクストン司法長官はトランプ大統領から強力な支援を受けている。トランプ大統領は党大会を前にパクストン司法長官を主要演説者に指名し、「われわれは彼を当選させなければならない」と語った。トランプ大統領の政治組織であるスーパーPACのMAGA Inc.も、パクストン司法長官を支援し、民主党候補を攻撃する広告に1,000万ドル(約15億3,600万円)を投じたと明らかにした。
しかし、パクストン司法長官は共和党内でも物議を醸している人物だ。2023年には収賄や職務怠慢などの疑いで弾劾裁判を受け、最近ではテキサス州の米上院選で民主党候補と接戦を繰り広げている。
特に、パクストン司法長官が予備選で破ったジョン・コーニン米上院議員と近い共和党の献金者は、パクストン司法長官への支援に消極的だと伝えられている。
今回の党大会が一般的な全国党大会とは性格が異なる点も注目される。米二大政党が中間選挙を前に全国規模の党大会を開催するのは、1982年の民主党以来初めてだ。
大統領候補を選出したり、党として正式な意思決定を行ったりする従来の党大会とは異なり、今回はトランプ大統領を中心とする大規模な政治集会に近い形で行われる見通しだ。
トランプ大統領は9日と10日の両日とも出席し、9日に基調演説を行う予定だ。J・D・ヴァンス米副大統領は10日に基調演説を行い、トッド・ブランチ米司法長官やスコット・ベッセント米財務長官など、トランプ政権の主要高官も演説する。
RNCは今回のイベントについて、11月の選挙で投票率を高め、トランプ大統領とその政策、さらにそれを議会で支える候補者を中心に有権者を結集することが目的だと説明している。
結局、今回の党大会は、共和党が抱える選挙戦略上のジレンマを浮き彫りにする場となる見通しだ。トランプ大統領にとっては強固な支持層を投票所に向かわせることが重要だが、激戦区の候補にとっては、トランプ支持層だけでなく、中道層や無党派層も取り込む必要があるためだ。
トランプ大統領を前面に押し出すことは、共和党全体では支持層の結集につながる可能性がある一方、一部の激戦区では、候補者がトランプ大統領と距離を置き、選挙区の有権者への働きかけに力を入れる方が有利だとの計算がある。

