中国7研究機関がClaudeを不正利用…2300万件超のやり取り、何に使った?
イランなど反体制派の管理を効率化
中国企業、「中継地点」を通じて蒸留作業

AI(人工知能)が、生物兵器の開発に悪用される恐れのある研究に利用された事例を確認したと、アンソロピックが10日(現地時間)発表した。
各国政府と関係する主体による反体制派などの監視や、中国の研究機関による自社AIモデルの訓練にも、同社のAI「クロード」が不正に利用されていたという。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)などによると、アンソロピックは同日、公式サイトで154ページに及ぶ報告書「2026年9月:AI悪用の検知と対応」を公表した。
報告書では、2025年12月から今年8月までに、生物学分野での悪用、サイバー作戦、監視、通常兵器の開発など、7分野でAIが利用された事例を紹介した。
アンソロピックは「クロード・ハイク、ソネット、オプスが使用された」と説明した。一方、「不正な蒸留が行われた1件を除き、フェイブル級とミトス級のモデルが使用された事例はなかった」としている。
蒸留とは、高性能なAIモデルの出力を学習データとして利用し、別のモデルを低コストで訓練する手法だ。技術そのものは合法だが、最近では中国企業が米国企業の許可を得ず、AIモデルの性能を大規模に複製しているとして、米中間の新たな対立要因になっている。
生物学分野での悪用を巡っては、一部の研究者が安全対策を回避したり、研究目的を曖昧にしたりして、クロードを利用した事例が確認された。ロシア、中国、イランなど、サービスの提供が制限されている国と関係するケースもあった。
サービス対象外の国にいる研究者の一人は、数週間にわたってクロードを利用し、鳥インフルエンザを哺乳類に適応させる実験を計画していた。この過程でアンソロピックの安全対策が作動し、利用できるAIは最も性能の低いモデルに制限された。
アンソロピックは、この研究がワクチン開発を目的とした正当なものだったのか、悪意のある目的だったのかは判断できなかったとしている。
そのうえで「新たに浮上する生物・化学分野のリスクと対策について、AI業界と政府の間で議論が始まることを望む」と強調した。
各国政府や関連団体が、監視活動にクロードを利用した事例も確認された。
中国政府との関係が指摘される主体は、SNSのデータを分析して政治的に敏感な人物を特定し、監視対象を絞り込んでいたという。
イランのハッカーが、SNS利用者の個人情報を収集する悪意のあるFirefox用拡張機能を、クロードを使って作成・配布した事例もあった。
アンソロピックの脅威インテリジェンス責任者、ジェイコブ・クライン氏は米ニュースサイト「アクシオス」に対し、「関連するアカウントをすべて停止し、セキュリティー対策を強化した」と説明した。一方で「関係する主体がオープンソースモデルへ移行したケースもあった」と述べた。
アンソロピックは、今年2月以降、中国の7つの機関がクロードを利用して不正な蒸留を試みていたとして、これを阻止したと発表した。
一部の機関は、「中継地点」と呼ばれる不正な仲介サービスを利用し、自社サービスの利用者から寄せられた質問をクロードへ転送していた。
仲介サービスは中国国外で運営され、偽造された身元情報や盗まれたクレジットカードなどを使ってクロードにアクセスしていたという。
中国のAI企業ムーンショットは数千件の偽アカウントを利用し、今年5~7月に2,300万件を超える会話を行っていたことが分かった。第三者の業者から、クロードとの会話記録を購入した中国の研究機関もあった。
アンソロピックは「少数のやり取りだけでも、モデルの性能を大幅に向上させることが可能だ」と指摘した。
さらに「抽出した情報に特定分野の内容がほとんど含まれていなくても、生物学やサイバー攻撃など、さまざまな分野で危険な能力を獲得するために役立つ可能性がある」と懸念を示した。
このほか、ロシア、マレーシア、イランなどと関係する宣伝活動にクロードが利用された事例も確認された。
通常兵器の開発にAIを利用しようとした事例も、イエメン関連で1件、中国関連で3件、ロシア関連で2件確認された。対象には銃器やミサイル、無人航空機などが含まれていた。

