AIに揺れるインドのIT雇用 アウトソーシング成長モデルに転機、モディ政権も対応模索
AIに揺れる「ITアウトソーシング神話」
モディ政権の雇用戦略も試練

人工知能(AI)の普及により、30年以上にわたりインド経済の成長を支えてきた情報技術(IT)サービス産業の雇用が揺らいでいる。質の高い雇用を供給してきたIT産業までもが「雇用なき成長」に陥る場合、インド経済全体に衝撃が広がる可能性があるとの懸念が出ている。
10日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)は、インドの主要IT企業であるインフォシスとウィプロの従業員数が、従業員数が3月時点で前年より5~6%減少したと報じた。コーディングや顧客サポート、バックオフィスなどの業務の多くが、生成AIに置き換わり始めているためだ。
1990年代の経済自由化以降、インドはソフトウェア輸出とバックオフィスアウトソーシングを前面に出して「世界のITアウトソーシング拠点」として成長してきた。インドのIT産業は国内総生産(GDP)の約7%を占め、約600万人の雇用を創出する重要な産業だ。これまで数百万人に中産階級へと上がる機会を提供し、社会的な上昇を支える役割を果たしてきた。
ITサービス産業の成長モデルは単純だった。海外顧客との契約が増えればエンジニアに対する需要も増えるというものだ。
しかし、AIはこの公式を覆している。ITサービス企業パーシステントシステムズの最高経営責任者は「過去には売上の増加に比例して人員も増えていたが、今ではその関係が崩れつつある」と述べ、「AIを利用すれば、より少ない人数でより多くの仕事ができる」と語った。
S&Pは、インフォシス、HCLテクノロジーズ、ウィプロの売上高の伸び率が、今後2会計年度は2~4%にとどまると予測した。前会計年度の4~6%を下回る水準だ。
ITサービス産業の雇用縮小がインド経済全体の雇用問題に波及する可能性がある。モディ政権はITサービス業とともに「メイク・イン・インディア」を前面に出した製造業の育成を雇用創出の柱として推進してきた。しかし、2014年のモディ政権発足以降、製造業のGDP比率は15%前後でなかなか高まっていない。中国やベトナムとは異なり、インドは本格的な製造業雇用の拡大に先立ち、AIやロボット自動化という新たな変数にも直面している。
雇用市場の冷え込みは明らかだ。採用コンサルティング会社エクスぺノによると、6月のインドの技術職の求人は約9万3,000件で、28ヶ月ぶりの最低水準に落ち込んだ。前月比14%減、前年同月比17%減となった。アジム・プレムジ大学の研究によると、インドでは25歳未満の大卒者の約40%が失業しているという。
インド政府と企業は大規模な投資で打開策を模索している。アダニグループやタタグループなどのインドの大企業は、今年初めにAI関連分野に2,000億ドル(約31兆8,600億円)以上を投資すると発表した。モディ政権も2024年から5年間で1,040億ルピー(約1,736億8,400万円)を投入すると発表した。
S&PはAIが「工場労働者を代替するロボットのように既存のビジネスモデルを脅かす」とし、「企業が単なる人員供給からAI専門性とソリューションを提供するビジネスにどれだけ早く転換するかが生存を左右する」と予測した。
多国籍企業のグローバル能力センター(GCC)も代替案として挙げられる。キャピタル・エコノミクスによると、インド国内のGCCは2020年の1,400件から約2,000件に増え、現在約190万人を雇用している。従来のアウトソーシングの雇用が減少しても、高付加価値業務を担当するGCCが一部の人員を吸収できるとの分析がある。
