「AIで人類滅亡」警告にジェンスン・フアン、トランプが示した反応は?

AI企業Anthropicの元・現職研究員らが発端となった、いわゆる「AI人類滅亡論」が急速に広がっている。米議会は「壊滅的リスク」を事前に防ぐとして規制立法に乗り出した。しかし、これは「繰り返される終末論」に当たるとして、過度な懸念は避けるべきだとの反論も出ている。その分、サイバーセキュリティ分野が急成長するなど、先端技術が代替策になるとの見通しも示されている。
米議会、超党派の規制立法に着手
10日、ロイター通信によると、米上院商務委員長のテッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)はアメリカン・ブロードキャスティング・カンパニーに出演し、「AIの壊滅的リスクを規制するための法案を準備している」と明らかにした。テッド・クルーズ上院議員は、米共和党のジョン・スーン上院院内総務(サウスダコタ州)、米民主党のエイミー・クロブシャー上院議員(ミネソタ州)と協力して立法を準備していると説明した。
米共和党のジョシュ・ホーリー上院議員(ミズーリ州)は、OpenAIのGPTモデルが外部機関の「Hugging Face」をハッキングした事件について詳細情報を求める書簡を送り、米民主党のマーク・ケリー上院議員(アリゾナ州)はSNSの「X(旧Twitter)」に「ワシントンは目を覚まし、この問題を真剣に受け止めなければならない」と指摘した。

下院でも、米共和党のネイサニエル・モラン下院議員(テキサス州)が「X(旧Twitter)」を通じて「議会はAIの現実を見過ごすことはできない」と述べたほか、米共和党のパウリナ・ルナ下院議員(フロリダ州)がマイク・ジョンソン米下院議長にAI関連の特別会期の招集を求めるなど、対応に乗り出している。
米国防総省「また一つの終末論にすぎない」
これに対し、米国防総省(戦争省)はAIによる人類滅亡の警告を不必要な恐怖だとして一蹴した。米国防総省の最高技術責任者(CTO)で研究・工学担当次官のエミル・マイケル氏は同日、ワシントンD.C.で開かれた防衛産業カンファレンスで「これは単に、データセンターへの恐怖や変化への恐怖など、あらゆる恐怖が、よく書かれた1本のツイートに凝縮されたものにすぎない」と反論したとブルームバーグが伝えた。
エミル・マイケル氏は「米国人の40%が失業することになるとか、人類が滅亡するというような『繰り返される終末論』(doom loop)に巻き込まれるのは簡単だ」とし、Anthropicの研究員らの警告を、しばしば現れる悲観的な終末論として退けた。さらに「AIがもたらし得る潜在的なリスクは、自由市場での競争や業界間の協力、政府との意思疎通などによって十分に緩和できる」と強調した。

ジェンスン・フアン「AIの次の巨大市場はサイバーセキュリティ」
NVIDIAの最高経営責任者(CEO)のジェンスン・フアン氏は、サイバーセキュリティをAIの次の主要な応用分野に挙げた。AIによるセキュリティ上の脆弱性をAIで防ぐことができるという趣旨だ。ジェンスン・フアン氏は同日、米サンフランシスコで開かれたゴールドマン・サックス・グループの技術カンファレンスに出席し、「問題を生み出すこと以上に良い需要創出の方法があるだろうか」と述べ、AIの発展がサイバーセキュリティを脆弱にすると同時に、AIへの需要も増やしていると指摘した。さらに、AIモデルの発展に伴ってコンピュータープログラミングの自動化が加速し、セキュリティ上の脆弱性の悪用と、それを防ぐ修正パッチの提供速度も急激に速まることで、サイバーセキュリティ業界全体が大きく変化していると分析した。
ただ、ジェンスン・フアン氏は、このようにサイバーセキュリティ危機論を前面に出した恐怖マーケティングについて「もちろん、これを実行するには責任ある方法もあれば、望ましくない(less attractive)方法もある」と付け加えた。

トランプ「人類滅亡?中国に先んじる方が重要」
こうした中、米国のドナルド・トランプ大統領は同日、テキサス州ダラスで開かれた共和党大会に出席した帰路、記者から「AIが人類を滅亡に至らせる可能性もある」との質問を受け、「全く心配していない」と答えた。さらに「私が心配しているのは、AI競争で勝てなければ非常に不利な状況に置かれるという点だ」とし、「われわれは中国をかなり大きな差、1年ほどリードしており、これは大きな差だと思う」と付け加えた。
これに先立ち、Anthropicを退社した研究員のジェイコブ・コクソン氏は「X(旧Twitter)」を通じて「AIを開発している人々は、この技術が10年以内に私たち全員を殺す可能性もあると本気で信じている」と暴露した。特に、ジェイコブ・コクソン氏のこうした警告にAnthropicの現職幹部らも同調し、米国社会に衝撃を与えた。
