急速な円高で…「日本企業の業績に重荷」
企業の想定為替レート1ドル=155~164円より円高
トヨタ、1円の円高で営業利益500億円減

最近、円高が主要メーカーの想定を上回るペースで進み、企業業績への負担が増していることが分かった。今年7月末の日米共同為替介入以降、円高が進み、1ドル=153~154円の水準となっており、企業が設定した年間の想定為替レートを上回る円高となっている。
11日、日本経済新聞系の金融情報会社QUICKによると、来年3月期の想定為替レートを公表している主要企業360社のうち、150社は1ドル=155~159円を前提に事業計画を立て、35社は160~164円を想定している。
現在の為替レートは、これらの想定より円高となる1ドル=153~154円で、7月末の介入以降、最大10円程度円高が進んだ。
これまで円安は、製造業の業績を押し上げる主要因となってきた。海外子会社が稼いだ利益を円換算した際の金額が膨らみ、輸出採算も改善するためだ。人工知能(AI)関連需要の拡大に円安効果も加わり、上場企業は4~6月に大幅な増益を記録した。
しかし最近は、米国からの圧力を受けて日本銀行が政策金利を引き上げる可能性が高まり、円高が急速に進んでいる。トヨタ自動車は8月の決算発表で、年間の想定為替レートを1ドル=160円に修正した。トヨタは、1円の円高で年間の連結営業利益が約500億円減少すると試算している。日立製作所、富士フイルムホールディングス、セイコーエプソン、ホンダも、業績見通しで従来より円安の水準を前提に想定為替レートを修正した。
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは、円がドルに対して1円上昇すると、上場企業全体の税引前利益が約0.3%減少すると分析した。ユーロに対する円高の影響まで含めると、減少幅は約0.4%に拡大する。
特に、自動車や電子部品など海外売上高比率の高い企業の負担が大きい。自動車・精密機器・電気機械・重工業分野の主要20社の4~6月の営業利益は前年同期比7,798億円増加し、このうち約90%が為替効果によるものと分析された。
電子部品メーカーのTDKは、海外売上高が全体の90%以上を占めている。4~6月の営業利益の増加額298億円のうち、113億円が円安効果によるものだった。マツダも同期間に営業黒字を確保したが、円安効果がなければ赤字を脱却できなかったと分析された。三菱自動車も、為替効果がなければ営業損失を計上していた可能性があると分析された。
Nikkei Asiaは「円高は日本経済全体にとって悪い面ばかりではなく、原油や原材料、食料品などの輸入価格を押し下げ、内需企業にはプラスとなる」とし、「輸入家具を日本で販売するニトリホールディングスのように、輸入依存度の高い企業は円高の恩恵を受ける可能性がある」と伝えた。
ただ、日本株市場ではグローバルメーカーの比重が大きいため、円高が企業全体の利益に及ぼす影響は小さくない。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「製造業は1ドル=150円程度までは耐えられるが、それ以上に円高が進めば、半導体関連企業の成長にもかかわらず、全体の業績は悪化するだろう」と予想した。
今年度(2027年3月期)、東京証券取引所プライム市場の上場企業の純利益は10%以上増加すると予想されている。米ビッグテックによるAI投資の拡大を背景に、半導体やデータセンター関連企業の成長が続いているためだ。しかし、円高が企業の想定を大幅に上回る水準で続けば、製造業全般で業績見通しが下方修正される可能性も高まるとみられる。
為替相場の変動も当面続く見通しだ。日本銀行は17~18日に金融政策決定会合を開き、利上げの是非を判断する。日銀幹部が利上げペースを速める可能性を示唆すれば、さらなる円高圧力が生じる可能性がある。一方、財政悪化への懸念や政治的不確実性を背景とした円売り圧力も残っており、市場の変動が続く可能性は高い。
