米公務員に応募したら「大統領への忠誠を問う?」…思わぬ質問に波紋
トランプ政策への貢献を問う応募項目に労組が「政治的中立に反する」と反発、連邦地裁が使用差し止めを命令

米連邦政府の航空管制官やクレーン操縦士、核物質輸送員などの職に応募した人々が、思いがけない質問に戸惑った。応募書類に「ドナルド・トランプ米大統領の政策や大統領令の推進にどのように貢献するか」をエッセー形式で記すよう求める項目があったためだ。
労組はこの応募書類に反発した。政治的中立が求められる連邦公務員の採用過程にこうした質問が含まれたことに異議を唱えた。労組側は、事実上、大統領への「忠誠心」を問うものだとして法廷に持ち込んだ。
トランプ政策にどう貢献?…公務員応募書類が「物議」
ロイター通信によると、米マサチューセッツ州連邦地裁のジョージ・オトゥール判事は11日、連邦公務員の採用過程でこうした質問を使用しないよう命じた。オトゥール判事は、2025年に政府職員を代表する3労組が起こした訴訟で、労組側の主張を認めた。
この質問を導入したのは米人事管理局(OPM)だ。OPMは連邦政府の公務員採用全般で、この質問項目を活用してきた。
論争の発端は、トランプ大統領が2025年1月に署名した大統領令だ。トランプ大統領はOPMに「米国の理想と価値、利益を促進することに献身する高度に熟練した米国人」だけを連邦職員として採用できるよう、計画を策定するよう命じた。
これを受け、OPMは2025年5月、全行政機関の責任者に送った覚書を通じて具体的な実行方法を示した。物議を醸した質問項目を応募書類に追加したのも、この方針に含まれた措置の一つだった。
労組は、ここに問題があると指摘した。質問は職務遂行への意欲を問うエッセー形式だったが、実際には応募者が共和党の大統領の政策をどの程度支持しているかを測ろうとするものだという。
公務員労組の米公務員連盟(AFGE)などは、この質問が政治的中立を守るべき非政治任用の連邦公務員の採用を違法に政治化すると主張した。AFGEのほか、全米地方政府職員労組(AFSCME)、全国公務員労組(NAGE)などが訴訟に加わった。
大統領政策に対する「応募者の態度」が争点に
法廷では、連邦政府が公務員を採用する際、大統領の政策に対する応募者の態度をどこまで確認できるかが争点となった。
公務員制度改革法は、航空管制官などの職種の採用過程で、政治的所属を理由に採否を判断することを禁じている。問題となった質問は、特定の職種だけに提示されたものでもなかった。オトゥール判事は、航空管制官、クレーン操縦士、核物質輸送員など、性質が全く異なる職種の応募者に同じ質問が提示されていたことに注目した。
裁判所は労組側の主張を支持した。応募者がこの質問を「政治的見解を把握しようとする試み」と受け取ったことは合理的だと判断した。オトゥール判事は、連邦公務員の応募者の政治的信念を探ることに政府としての正当な利益はなく、労組側の主張が認められる可能性が高いと判断した。さらに、この質問が米憲法修正第1条が保障する表現の自由を侵害し、行政手続法(APA)に違反する可能性が高いとして、この質問の使用継続を差し止めた。
ただし、これは公務員制度改革法に違反するかどうかを最終的に確定した判断ではない。行政府が採用過程で表現の自由を侵害する恐れのある質問を使用したことから、行政手続法上、違法とされる可能性が高いと判断したものだ。
「忠誠心」問う質問、7万件超の求人に掲載 判決の影響に注目
一部では、今回の裁判所の決定が及ぼす影響に注目が集まっている。労組を代理したリベラル系法律団体デモクラシー・フォワードは、この質問が含まれた連邦政府の求人公告が7万件を超えたと主張した。能力や経歴を中心に採用すべき連邦公務員の採用制度に、政治的な基準が持ち込まれたというのが同団体の主張だ。
今回、裁判所がこの質問の使用を差し止めたことで、従来の採用方式をそのまま続けることはできなくなったとの見方が出ている。
エバレット・ケリーAFGE全国会長は「連邦政府の求職者に政治的な意図が込められた質問への回答を求めることは、非党派的な公務員制度の本質に反する」と述べた。採用過程で大統領の政策に対する応募者の姿勢を評価すること自体が、連邦公務員制度の政治的中立性と相いれないという趣旨だ。
一方、OPMは今回の判決直後、ロイター通信のコメント要請に直ちには応じなかった。ただ、これまでこの質問は任意回答にすぎないとの立場を示してきた。また、政治的信念を理由に採用を決定してはならないことを明確にしてきたと反論している。

