「8800万円」賠償回収へ北朝鮮工作船を差し押さえ申請 競売は実現するのか
横浜地裁に8800万円の賠償判決の執行を申し立て 海保が工作船の所有権を主張、競売・現金化の実現は不透明

過去に在日朝鮮人の「北朝鮮帰国事業」で北朝鮮に渡り、その後、脱出した4人が、北朝鮮政府に対する損害賠償の確定判決に基づく債権を回収するため、北朝鮮工作船の差し押さえを求めている。
読売新聞や朝日新聞などによると、原告4人は8月31日、横浜地方裁判所に対し、横浜市の海上保安資料館横浜館に展示されている北朝鮮工作船と、遺留品などの関連資産の差し押さえを申し立てた。
原告らは、確定判決に基づく賠償を実現することで、北朝鮮による人権侵害の責任を問う考えだ。北朝鮮政府がこの船舶の所有者であれば、日本政府に船舶の返還を求める権利があるとみている。この返還請求権を差し押さえたうえで、競売にかける計画だ。
原告らは1960年から1972年にかけて、「北朝鮮は地上の楽園」とする宣伝を信じて北朝鮮に渡った。その後、過酷な生活を強いられ、出国も制限されたといい、2001年から2003年にかけて北朝鮮から脱出し、日本に戻った。
東京地方裁判所は今年1月、北朝鮮政府に対し、原告4人にそれぞれ2,200万円、総額8,800万円を賠償するよう命じる判決を言い渡した。裁判所は、原告らが北朝鮮の帰国事業によって「人生の大半を奪われた」と認定した。北朝鮮側は訴訟に出廷せず、答弁書も提出しなかった。
差し押さえの対象となっている工作船は2001年、鹿児島県・奄美大島沖で海上保安庁の巡視船と銃撃戦になった後、沈没した船舶だ。全長約29メートル、約44トンの船舶で、翌年に海底から引き揚げられ、現在は横浜市の海上保安資料館横浜館に展示されている。
ただ、実際に差し押さえや競売を実現するには、法的、現実的な課題が残る。海上保安庁は、工作船の所有権は海保にあり、適切に維持・管理しているとの立場を示している。仮に裁判所が原告側の主張を認めたとしても、工作船が競売にかけられた場合に買い手がつくのか、また、どの程度の金額を回収できるのかは不透明だ。
原告代理人の福田賢治弁護士は朝日新聞のインタビューで、「前例がなく、実現可能性は未知数だが、北朝鮮政府に人権侵害の責任をしっかりと取らせることは重要な課題だ」と述べた。
北朝鮮に家族12人を残す原告の川崎栄子さんは、「彼らに会えないまま死ぬわけにはいかない。現金化できれば、再会のための活動費に使いたい」と語った。
