「数百発のミサイル・無人機を同時発射」中国軍、ウクライナ戦争から学ぶ台湾封鎖とは

現代戦の様相を大きく変えた二つの大きな出来事、「ウクライナ侵攻」と「中東紛争」から得られる教訓を、最も熱心に研究し取り入れているのが中国人民解放軍だ。最近、台湾国防部が立法院(議会)に提出した「2026年中国軍事力報告書」によると、北京はウクライナでの低コストなドローン戦術と中東での消耗戦から得た教訓を組み合わせ、台湾を徐々に追い詰める「共同封鎖・制御」シナリオを完成させつつある。
低コストのドローン群で高価な防空網を無力化
ウクライナの戦場で最も大きな効果を発揮した非対称戦力の一つが、ドローンだ。中国軍は一人称視点(FPV)ドローンや低価格のドローンを大量に投入し、パトリオットなど台湾の高価な防空システムを継続的に消耗させる、いわゆる「コスト非対称戦略」を模索している。
相手の高価な迎撃ミサイルを安価なドローンで消耗させた上で、核心的な戦力を無力化する現代の消耗戦の構造を、そのまま台湾海峡に適用しようとしている。
海警と海上民兵を動員した「グレーゾーン」封鎖
中東の戦場などで露呈した同盟国間の協力体制の脆弱性や、消耗戦の負担を踏まえ、中国は全面的な上陸作戦ではなく「海上封鎖」に目を向けている。今年、中国海警局の船舶や調査船による台湾周辺での活動は、過去最多となった。
これは正規軍ではなく海警や海上民兵を前面に立たせ、いわゆる「グレーゾーン戦術」によって、緊急時に台湾へ入る商業貨物や生活必需品を海上で物理的に遮断するための予行演習という性格を持つ。台湾海峡を事実上「中国の内海」とするための布石とみられる。
持久戦を見据えた補給能力と飽和攻撃
中国軍はウクライナや中東での戦闘を通じ、持続的な補給と連携した指揮統制が戦況を左右することを認識した。これに伴い、東部戦区を中心に、海上・航空・電子戦を連携させた多領域での統合作戦訓練を強化している。また、数百発のミサイルや無人機を同時に発射する飽和攻撃によって、台湾の軍需・補給網を初期段階でまひさせる持久戦の態勢を構築している。
台湾の対抗策、「ハイ・ロー・ミックス」で長期戦に備え
中国が戦場で得た教訓を迅速に取り入れる中、台湾の軍当局も戦術の転換を急いでいる。まず、主要な司令部や通信網を分散配置するとともに、低コストの手段を組み合わせる「ハイ・ロー・ミックス(High-Low Mix)」戦略を加速させている。
年次軍事演習「漢光」では、中国による海上封鎖で西部の港湾が封鎖される事態を想定し、東部沿岸を通じた戦略的な輸送路の確保や、掃海艦(機雷除去艦)を動員した航路の確保に向けた大規模な訓練を実施した。
2027年度の国防予算案を過去最大となる1兆1,225億台湾ドル(約5兆5,300億円)に決定し、分散配置型の防爆弾薬庫6か所の新設や、「空母キラー」と呼ばれる雄風対艦ミサイルの調達に大規模な投資を行う。
中国軍が全面的な上陸作戦に必要な制空権や制海権を完全に確保するには、なお限界があるとの見方が支配的だ。一方で、実戦から教訓を得て構築された封鎖網は日々、精密化している。台湾海峡はもはや地域的な対立にとどまらない。地球の反対側で起きている現在戦の様相が最も集約的に表れる、世界で最も危険な戦場へと変わりつつある。

