「米軍艦に命中、撤退させた」…イランが証拠映像公開、実際の被害は確認されず

先週の米国とイランの軍事衝突で、イランが発射したミサイルが米軍艦に命中し、被害を与えたとの主張が出ている。
イラン国営通信IRNAは7日(現地時間)、「イラン海軍が、米国によるイランのタンカー攻撃に対抗し、ホルムズ海峡付近とイラン領海で米国の駆逐艦を攻撃した」と伝え、関連映像を公開した。
公開された映像では、ミサイルが1隻の船舶に接近した後、間もなく爆発が起きる様子が確認できる。
イラン・イスラム革命防衛隊(IRGC)も「米軍艦2隻がイラン製の弾道ミサイル『カセム・バシール』による攻撃を受け、いずれも損傷した後、当該海域から撤退した」と主張した。
イラン国営メディアが公開した映像は攻撃の様子を捉えたものとみられるが、実際に命中したかどうかや被害の有無は確認されていない。また、異なる時点で行われた複数の攻撃が1本の映像に収められているものの、それぞれの攻撃に関する具体的な説明はなかった。
これに先立ち、中東での作戦を担当する米中央軍(CENTCOM)は5日、イランが米軍艦に向けて弾道ミサイルを発射したことへの報復として、イランのタンカー3隻を攻撃したと明らかにした。
また、イランが米軍の空母と駆逐艦を狙って複数回攻撃を行ったものの、米軍艦はいずれも攻撃を回避し、人的被害や艦船への被害はなかったとしている。
「今回の衝突は危険なエスカレーション」
イランが実際に米軍艦へ発射したミサイルによって、米側に被害が生じたかどうかは確認されていないが、米軍はイランが米軍艦を攻撃した事実自体は認めている。これを受け、専門家の間では、米国とイランの衝突が重大な転換点を迎える可能性があるとの懸念が出ている。
AP通信は8日、専門家の見解を引用し、「この一連の衝突は危険なエスカレーションだ」と指摘したうえで、「イランは過去6か月の戦争で、海上では主に商船を攻撃してきた」と伝えた。
イランが今回、商船ではなく米軍の軍事資産への直接攻撃を試みたことは、米国とイランの衝突がさらにエスカレートする重大な転機になったとの見方も出ている。

実際、イラン最高国家安全保障会議(SNSC)のモフセン・レザイ書記は6日、現地メディアに「戦争、交渉、そして封鎖に対抗するため、新たな戦略を採用すべきだという結論に達した」と述べた。
イラン国内では、マスード・ペゼシキアン大統領ら一部の交渉派が外交的解決を呼びかけているが、強硬保守派は依然として、米国との交渉によってイランが戦争で得た成果が損なわれる可能性があるとして、強硬姿勢を維持している。
このため、一部ではイランが全面戦争よりも段階的なエスカレーションを選択する可能性が高いとの見方も出ている。
国際危機グループ(ICG)のイラン担当上級分析官ハミドレザ・アジジ氏は「イランが海上輸送への圧力を強めたり、米軍基地や海軍戦力への攻撃を拡大したりするほか、域内のエネルギー関連インフラを攻撃する形で対応する可能性がある」との見方を示した。
米国に相応の代償を払わせることで、外交的解決を再び魅力的な選択肢にしようとする戦略だ。
アジジ氏は「問題は、両者が互いのレッドラインを試し始めれば、誤算のリスクが大きく高まることだ」としたうえで、「イランの攻撃で相当数の米軍死傷者が出たり、米国の対応がテヘランのレッドラインを越えたりすれば、事態は限定的なエスカレーションの範囲を超え、全面戦争へと急速に発展する可能性がある」と警告した。
米軍艦を狙った新型ミサイルの正体は
一方、レザイ書記は7日、国営放送に出演し、「イランが米軍艦を標的に新型ミサイルの試験発射を行った」と主張した。これに関連し、革命防衛隊は「カセム・バシール」ミサイルを使用したと具体的に言及した。

カセム・バシールは、イランが2025年5月に公開した新型弾道ミサイルで、既存の「シャヒード・ハジ・カセム」ミサイルを改良したモデルだ。最大の特徴は、誘導能力と終末段階での機動性を強化した点にある。
一般的な弾道ミサイルは発射後、あらかじめ設定された目標に向かって飛行するが、カセム・バシールはイラン側の説明によると、目標に接近する最終段階で機動し、飛行経路を調整できるよう設計されている。
イランは、こうした能力によって敵のミサイル防衛システムを回避し、目標をより正確に攻撃できると主張してきた。また、イラン側によると、このミサイルはGPS信号に依存せず、電子戦や電波妨害下でも目標を探知できるという。
実際、イランは7日に公表した報告書で「カセム・バシールがイランの防衛戦略における転換点になる」としたうえで、「このミサイルには500キログラム級の弾頭が搭載されている」と説明した。
現在、革命防衛隊は、自国が保有するミサイルの90%が健在で、生産施設も復旧したと主張している。
