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2026年9月1日(火) 東京 --

「88兆円投資」で関税27.5%→15% 赤澤氏が明かすトランプ交渉の舞台裏

赤澤亮正経済産業相

『トランプ関税 交渉の記録』出版

関税交渉の舞台裏を公開

引用:SNS
引用:SNS

「交渉成立だ!(You have a deal!)」

2025年7月22日、アメリカ・ホワイトハウスのオーバルオフィス。アメリカのドナルド・トランプ大統領は日本との関税交渉の最中、突然席を立ち、机越しに手を差し出した。日本側の首席交渉官を務めていた赤澤亮正経済産業相がその手を握ると、周囲にいたアメリカ政府関係者や共和党議員らが拍手を送った。隣にいたハワード・ラトニック商務長官は赤澤氏と抱き合った。

赤澤経済産業相は2026年8月21日に刊行した『トランプ関税 交渉の記録』で、2025年の日米関税交渉の舞台裏を明らかにした。トランプ大統領との直接交渉、ラトニック商務長官との水面下での交渉、最後の切り札となった「コメをめぐる提案」、さらに合意直後にアメリカ側が発表した内容が実際の合意内容と異なり、再交渉に入らざるを得なくなった経緯などを記している。

日本が編み出した交渉方式は、日本国内にとどまらなかった。赤澤経済産業相は、日本が提示した大規模な対米投資の方式が、その後、欧州連合(EU)や韓国とのアメリカの関税交渉でも参考にされたと説明した。スコット・ベッセント財務長官も、日本の投資イニシアチブがその後の交渉のモデルになったという趣旨の評価を示した。

赤澤経済産業相が交渉を担当していた当時、日本は切迫した状況に置かれていた。トランプ大統領は2025年3月、アメリカ産以外のすべての自動車に25%の追加関税を課すと発表した。赤澤経済産業相は、石破茂首相(当時)から交渉を任せると告げられた瞬間について、「胃が1センチほど上がったような感じだった」と振り返った。石破首相は「骨は拾ってやるから」と冗談を言ったという。

時間も日本に味方していなかった。日本の自動車業界からは、関税によって「1時間に1億円」「1日に20億円」の損失が発生するとの訴えが政府に寄せられていた。赤澤経済産業相は、日本の基本戦略を「関税より投資」と定めた。農産物の関税を追加で引き下げる代わりに、アメリカへの投資を拡大し、アメリカ国内の生産と雇用を増やすという方式だった。

交渉を重ねる中で、赤澤経済産業相はラトニック商務長官との間に個人的な信頼関係も築いた。赤澤氏は著書の中で、ラトニック商務長官を「ラトちゃん」という日本式の愛称で呼んでいる。ラトニック商務長官は家族旅行に出かける直前、赤澤氏を自宅に招き、当初30分の予定だった会談を90分にわたって続けた。さらに旅行先からも再び電話をかけ、交渉を続けたという。

最後には「コメカード」も用意した。赤澤経済産業相はこれを「最後の秘策」と表現している。石破首相や林芳正官房長官、自民党の農林族関係者らの了承を得た上で、アメリカ側に提示する準備を進めた。赤澤氏は最後の勝負を前に、石破首相に「骨は拾ってください」と言ったと振り返っている。

大きな転機は、参議院選挙の直後に訪れた。2025年7月20日の選挙で与党が惨敗し、石破政権の基盤が弱まった。赤澤氏は、アメリカ側が「石破首相が退陣するかもしれないので、しばらく待とう」と判断する可能性まで懸念していたことを明らかにした。

ワシントンでラトニック商務長官は赤澤氏に、「明日、オーバルオフィスでトランプ大統領に会って、話をまとめることができる。やりたいか?」と尋ねた。翌日の最終交渉では、投資規模と関税率を巡って直接交渉が行われた。赤澤氏は、あらかじめ決めていた範囲内で「指を立てながら」数字を調整したと振り返っている。

最終的に、日本がアメリカへの投資規模を5,500億ドル(約88兆円)に拡大する代わりに、自動車関税を含むアメリカの関税を引き下げることで合意した。

合意の結果、日本の自動車・自動車部品に適用される関税は27.5%から15%に引き下げられた。赤澤経済産業相はこれを、日本の自動車業界の出血を止めるための「止血」と表現した。ただし、自動車関税の引き下げを引き出すまでには「墓場まで持っていく議論」があったとして、その一部については著書でも明らかにしていない。

しかし、交渉はここで終わらなかった。アメリカがその後発表した大統領令に、日本側が合意したと認識していた「ノンスタッキング」条項が盛り込まれていなかったためだ。そのまま施行されれば、既存の関税に15%が上乗せされることになる。日本はすぐに「延長戦」に入り、合意内容の修正と履行を求めた。

赤澤経済産業相は著書の中で、今回の交渉を日米関係の転換点と位置付けた。自由貿易一辺倒から脱却し、経済安全保障とサプライチェーンを国家が直接管理する時代が到来したと指摘。その上で、日本もアメリカと戦略産業に共同投資する方式で対応すべきだとの主張を盛り込んだ。

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