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2026年9月10日(木) 東京 --

「これは始まりにすぎない」米国で“頭脳流出” 研究者48人をカナダが一挙獲得

世界の人材を集めてきた米国、今や「頭脳流出」に苦慮

米国の著名研究者がカナダ・欧州へ

研究費への不安、反移民政策、大学統制に研究者が反発

ノーベル化学賞受賞者に続き、RNA治療研究所長も海外へ

米国のマサチューセッツ大学チャン医学部でリボ核酸(RNA)治療研究所を率いるフィリップ・ザモア所長は最近、カナダ・モントリオールのマギル大学に移ることを決めた。米国立衛生研究所(NIH)から支給される予定だった研究費の執行が18か月も遅れているためだ。ザモア所長は「研究室の規模を縮小せざるを得なかった」と明かした。

引用:ERC
引用:ERC

移籍を後押ししたのは、カナダ政府が設けた17億カナダドル(約1,900億円)規模の「グローバル・インパクト+研究人材イニシアチブ」だ。同プログラムでは、ザモア所長に年間110万ドル(約1億6,900万円)が提供される。

数十年にわたり世界中から人材を集めてきた米国だが、現在は研究者らが相次いで国外へ流出している。これまで「米国に人材を奪われる」状況を表してきた「頭脳流出(brain drain)」が、今や米国自身の問題になったとの指摘も出ている。

カナダは先月28日(現地時間)、ザモア所長をはじめとする米国内のトップレベルの研究者48人を、国内21大学に一挙に招へいしたと発表した。著名な天文学者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)のサラ・シーガー教授や、コンピューターによるタンパク質設計を専門とするノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNCチャペルヒル)のブライアン・クールマン教授らが含まれる。

学術誌『Nature』によると、研究者の多くは米国の研究資金支援を巡る不確実性を、移籍を決断した主な理由に挙げている。持続可能性や気候、環境など、トランプ政権が好まない分野を研究する学者も多数含まれていた。トランプ政権を批判してきたイェール大学の歴史学者夫妻、ティモシー・スナイダー教授とマーシー・ショア教授も、カナダのトロント大学に移った。

欧州を選ぶ研究者もいる。今年初め、フランスは「科学のためにフランスを選ぶ」プログラムを通じ、米国を拠点とする研究者41人を招へいした。2019年のノーベル経済学賞受賞者、エステル・デュフロ教授とアビジット・バナジー教授夫妻は、スイスのチューリヒ大学で教える予定だ。

トランプ政権の反移民政策も人材流出の一因となっている。今年に入り、トランプ政権は外国人留学生向けのFビザと交換研究者向けのJビザについて、滞在期間を4年に制限する方針を公布した。卒業後にインターンシップなどのため追加滞在を認める実務研修制度(OPT)も、これまでより大幅に制限して運用される予定だ。米国で働く専門職向けのH-1Bビザについては、取得に10万ドル(約1,536万円)の支払いを求めるようにした。米国が基礎科学分野で受賞したノーベル賞104件のうち37件は、外国出身の米国人研究者が受賞したものだが、今後はこうした状況が見られにくくなるとの見方が出ている。

さらに、トランプ政権が多様性(DEI)関連の支援状況を調査するとして監視や統制を強化し、学界への締め付けを進めていることも、研究者の反発を招いている。トランプ政権は昨年、米国のコロンビア大学が反ユダヤ主義への対応に十分取り組んでいないとして、4億ドル(約614億5,000万円)規模の連邦助成金を撤回した。これにより、多くの研究者が職を失った。

中国に敵対的な雰囲気が強まる中、帰国する中国系研究者も増えている。CNNは、第2次トランプ政権の発足以降、米国から中国の研究機関へ完全に移籍した科学者が少なくとも85人に上ると報じた。

米中対立が続く中、中国を選ぶケースもある。昨年、ノーベル化学賞を共同受賞したカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)化学科のオマー・ヤギ教授は、中国の清華大学への移籍を決めた。中国側がより多くの支援を約束したためだと海外メディアは報じた。

ニューヨーク市立大学のマイケル・ルーベル教授は、米国の人材流出について「完全に予測できたことだ」と述べ、「これは始まりにすぎない」と指摘した。米国大学協会のリン・パスケレラ会長もフィナンシャル・タイムズに対し、「米国は研究者だけでなく、彼らのアイデアや発見、イノベーションまで失う危険にさらされる可能性がある」と懸念を示した。

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