「トランプ関税を批判したら…」IMF調査局長の有力候補、土壇場で脱落
LSEへイス教授、選任発表直前にIMFが方針撤回
米国、IMF最大の出資国として大きな影響力…経済学者への圧力に懸念広がる

国際通貨基金(IMF)が、ドナルド・トランプ米大統領の関税政策を批判していた有力な経済学者を新たなチーフエコノミストに選任しようとしていたものの、土壇場で方針を撤回したと伝えられた。
10日(現地時間)のフィナンシャル・タイムズ(FT)によると、IMFは今夏初め、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のリカルド・へイス教授を調査局長兼チーフエコノミストに選任すると発表する準備を進めていたが、直前になって計画を撤回したという。
事情に詳しい関係者らは、ヘイス教授が過去にトランプ大統領の関税政策を批判したことが、方針撤回の背景にあったと伝えた。IMFは最終的に7月、英国中央銀行(BoE)の金融政策委員会委員を務めたLSEのシルバナ・テンレイロ教授を同職に任命した。
ヘイス教授は昨年4月、トランプ大統領がいわゆる「解放の日(Liberation Day)」関税を発表した後、関税の負担は米国の消費者に転嫁され、新たなインフレを引き起こすと警告した。
その後も「関税によって米国の物価は上昇する」とし、トランプ大統領の関税について「輸入品の価格を直ちに押し上げ」、米国内での生産を「より困難で、より高コストかつ非効率なものにする」と批判した。
IMFの幹部人事はクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事が担うが、米国はIMF最大の出資国として、非公式ながら大きな影響力を行使することができる。
ゲオルギエバ専務理事は以前、スコット・ベッセント米財務長官から批判を受けた後、ジェンダー平等や気候変動を重視する姿勢を弱めた。ベッセント財務長官は、IMFはマクロ経済と金融安定という本来の役割に集中すべきだと求めてきた。
ヘイス教授が候補から外れたのは、トランプ政権の経済政策を批判する経済学者への圧力を巡る懸念が高まる中でのことだった。
トランプ大統領は昨年、ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏が、関税は米国経済に打撃を与えると主張したことを受け、同社のデイビッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)にハチウス氏を解雇するよう求めた。
今年初めには、トランプ大統領の顧問を務めるケビン・ハセット氏が、米国の関税コストの大半を米企業と消費者が負担しているとする報告書を発表したニューヨーク連邦準備銀行のエコノミストらについて「懲戒処分すべきだ」と主張したが、その後、この発言の一部を撤回した。
一方、IMFのチーフエコノミストは100人を超える経済学者からなる組織を率い、IMFの政策課題の設定に関与する。自由貿易を推進してきたIMFの役割は、関税と国家の経済安全保障を重視するトランプ政権の政策方針と衝突しているとの見方が出ている。

