国債買い戻し拡大に10年債発行まで…米国債金利は「嵐の前の静けさ」
9日、債券市場の分水嶺
9月の投資適格社債発行額は
2,150億ドル、過去最大の見通し
AI企業が投資資金の確保に奔走、
イラン戦争による原油高も悪材料に

米国のレイバー・デー(労働者の日)の連休が終わり、市場が再開する8日(現地時間)以降、大規模な社債・国債発行に加え、米財務省による国債買い戻し(バイバック)の拡大が初めて実施される。米国債利回りを巡っては「嵐の前の静けさ」との見方が出ている。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)は最近、9月の米国の投資適格社債発行額が1,900億ドル(約29兆1,700億円)に達し、9月として過去2番目の規模になると予測した。8月には過去最大の1,640億ドル(約25兆1,800億円)分が発行されたため、9月の予想を従来の2,000億~2,500億ドル(約30兆7,000億~約38兆3,600億円)から1,900億ドルに引き下げた。ただ、それでも高水準で、さらに増える可能性もある。BofAによると、これまで最大だった昨年9月には2,140億ドル(約32兆8,300億円)分が発行された。
ブルームバーグ通信がディーラーを対象に実施した非公式調査では、今月の投資適格社債発行額は2,150億ドル(約33兆5,300億円)に達すると予想された。ブルームバーグの集計では、9月としての過去最高額は昨年の2,075億ドル(約32兆3,600億円)で、これを上回る可能性がある。ウォール街の一部では、9月だけで2,500億ドルが発行される可能性もあるとみている。ハイパースケーラーが人工知能(AI)投資に必要な資金を確保するため、相次いで債券を発行するとの観測が出ている。
米国をはじめ、フランス、英国、日本など先進国の債券市場が最近混乱し、ただでさえ投資家心理が冷え込む中、大規模な債券供給によって国債への需要が分散し、国債利回りの上昇(国債価格の下落)につながる可能性がある。特に、米国政府による10年物国債の発行とバイバック規模の拡大開始が重なる9日が分水嶺となりそうだ。同日、米財務省は390億ドル(約6兆円)規模の10年物国債を入札にかける一方、長期国債のバイバック規模を従来の1回当たり20億ドル(約3,100億円)から40億ドル(約6,140億円)に倍増する。10日には220億ドル(約3兆4,000億円)分の30年物国債も発行する。
こうした国債市場の不安定化を巡っては、財政健全化を目指す米国のドナルド・トランプ政権の当初の構想がつまずいているという構造的な要因が背景にあるとの見方も出ている。トランプ政権は、国内総生産(GDP)比で5%台後半にある連邦政府の財政赤字を任期中に3%まで引き下げると公言した。看板政策である大規模減税はそのまま推進する一方、減税で生じる税収の穴を相互関税で埋め、歳出を見直すために政府効率化省(DOGE)を発足させたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)にも利下げを迫った。関税によって増税と同様の効果を生み、DOGEを前面に立てて膨張した政府支出を削減する構想だった。さらに、利下げによって歳出見直しなどに伴う景気悪化を防ぎ、債務の利払い負担も軽減する戦略だった。
しかし、相互関税は連邦最高裁判所によって違法との判断が下され、代わりに各国の「強制労働」を名目として通商法301条に基づく関税を課したものの、相互関税による税収を補うには不十分との分析が大勢を占めている。DOGEは2兆ドル(約306兆8,000億円)の歳出削減を目標に掲げたが、1,100億ドル(約17兆億円)の成果を上げたと自ら評価した。しかし、この成果についても米会計検査院(GAO)は「検証できない主張に基づくものだ」と指摘した。
特にイラン戦争が大きな打撃となった。国際原油価格の上昇が物価を押し上げ、利上げ観測に直結したことで、2年物国債利回りが上昇した。一方、米国政府の長期的な財政健全性への懸念も強まり、投資家がより高いプレミアムを要求したことで、30年物国債利回りも急騰した。
スタンダードチャータードのトーマス・キキス米国市場責任者はマーケットウォッチに対し、相次ぐ社債発行や大規模な新規株式公開(IPO)などを挙げ、「レイバー・デー以降、クリスマスまで混乱が予想される」と懸念を示した。
