米国、ベネズエラ原油650億バレルの過半を管理 埋蔵量2倍へ

米国のドナルド・トランプ大統領が、ベネズエラ国内の650億バレルを超える原油の確認埋蔵量について、過半の支配権を確保したと明らかにした。11月の中間選挙を前に支持率が過去最低を記録するなか、ベネズエラの原油で突破口を見いだそうとする構えだ。
トランプ大統領は28日(現地時間)、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「米国はベネズエラと合意に達したばかりで、これは世界史上、最大規模の原油に関する契約だ」と書き込んだ。
さらに「民間企業との連携を通じ、米国民の税金を一切使わずに、650億バレル以上の原油埋蔵量について過半の支配権を確保した」とし「この歴史的な取引により、米国が支配する確認埋蔵量は2倍以上に増え、我々の原油の供給量も増える。今後、長期にわたり、すべての米国民のガソリン価格をかなり低く抑えられるだろう」と強調した。
米国はベネズエラとの合弁会社を通じて、ベネズエラ国内の17カ所の油田について100年間の開発権を確保することになった。
ベネズエラは今回の合意により、総額2,090億ドル(約33兆3,900億円)に上る税収を確保する見込みだ。

ロイター通信が入手した油田の一覧には、オリノコ川流域の未開発の油田と、マラカイボ湖の周辺の既存の油田が含まれており、一部は1月に政権を追われたニコラス・マドゥロ氏の在任中に契約を結んだ中国系の企業が運営しているとされる。
マルコ・ルビオ米国務長官はこの日、SNSで「今回の合意により、ベネズエラには1,000億ドル(約15兆9,800億円)規模の民間投資が行われ、数千人分の高賃金雇用が生まれ、ベネズエラ経済の再建に弾みがつくだろう」と述べた。
この事業が実現すれば、米国とベネズエラの合弁企業は、サウジアラムコに次いで世界で2番目に大きな確認埋蔵量を持つ企業になるとみられる。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「米政府が外国での原油生産に直接関与するのは極めてまれだ」とし「第2次世界大戦の際、フランクリン・ルーズベルト政権が国営企業を設立して海外の埋蔵量を確保し、サウジアラビアで権益を持つ米企業の買収を進めたが、失敗に終わった」と伝えた。
現在、ベネズエラは世界最大規模の約3,000億バレルの確認埋蔵量を持つと推定される。米国の埋蔵量は約460億バレルだ。
ベネズエラの原油でイラン・ロシア・中国を抑えられるか
トランプ政権は今回の合意により、短期的にはイラン戦争の余波による原油価格を安定させ、世論をなだめて中間選挙に生かそうとしているとみられる。
実際、専門家は、米国とベネズエラの今回の合意が、イランやロシアなど米国に敵対的な国々が影響力を及ぼしてきた原油市場に、相当な変化をもたらすと予想している。
米国が西半球を中心とする原油供給網を築き、地政学上の要因による供給不安への脆弱性を低減し、トランプ大統領が強調してきた「ドンロー主義」をエネルギー安全保障の面で実現できるようになるためだ。
ドンロー主義は、西半球で中国やロシアなど域外の勢力の影響力を排除し、米国の支配力を強めるという、トランプ大統領流のモンロー主義を指す。ドナルドとモンローを掛け合わせた造語だ。

「トランプ大統領のドンロー主義」が現実になり、米国の原油市場が安定すれば、トランプ大統領は中間選挙を前に、イラン戦争で離れた有権者の支持を取り戻し、新たな出口戦略を練ることができるとの見方も出ている。
さらに、ベネズエラ産の原油が、米国による中国のけん制にも大きな役割を果たす可能性も指摘されている。
中国はこれまでベネズエラ産の原油を主要な供給元の一つとして活用してきており、ベネズエラも中国を主要な経済パートナーとしてきた。米国がベネズエラの原油産業に深く関与するようになれば、中国が南米で確保してきたエネルギーの影響力にも変化は避けられない。
米国にとっては、中東でイランと対峙しながら、西半球では中国の経済的な影響力をけん制するという、二つの地政学上の目標を同時に進められることになる。今回の合意がトランプ大統領の「出口戦略」と解釈される背景だ。
ベネズエラ、米国と中国の間で揺れる可能性
ただ、一部ではベネズエラ国内の政治情勢を不確定要素として挙げている。米国が原油産業へのアクセス権を広げる過程で、ベネズエラ政府と野党、国営石油会社PDVSAなどをめぐる利害がどう整理されるかによって、合意が続くかどうかが変わる可能性がある。
特に、原油生産施設を正常化するには膨大な投資とインフラの復旧が必要で、米国が確保した権利が実際の増産と輸出の拡大につながるかどうかは不透明だ。
さらに、ベネズエラが米国と中国のどちらに傾くかによって、今後の中南米におけるエネルギー分野の勢力図と地政学上の構図にも変化が訪れると予想される。


