「最大10発の核爆弾も」イラン核問題、20年ぶり国連安保理へ IAEAが異例の決定
IAEA理事会、35カ国中23カ国が賛成 中国・ロシア・ニジェールは反対
イラン大使「米国・イスラエルとの戦争で査察義務の履行は不可能」
国連安保理では中露の拒否権、制裁など懲罰措置の可能性は低く

国際原子力機関(IAEA)理事会は9日、イランが未申告施設で査察官によって発見されたウランの痕跡に関する調査に協力しなかったとして、約20年ぶりにイラン問題を国連安全保障理事会に付託した。
欧米当局者は、このウランの痕跡が、イランが2003年まで秘密裏に核兵器開発計画を進めていたことを示す証拠となる可能性があるとみている。
一方、イランは核兵器を開発しておらず、自国の核開発計画は全面的に平和利用を目的としたものだと主張している。
イラン問題が国連安保理に付託されたことで、対イラン制裁や資産凍結などの措置につながる可能性が生じる。ただし、ロシアと中国が拒否権を行使する可能性があるため、実際に懲罰的な措置が取られる可能性は低いとみられる。
ウィーンのIAEA本部で開かれた理事会では、35の理事国のうち23カ国が決議案に賛成票を投じた。
米国、英国、フランス、ドイツが提出した決議案に対し、中国、ロシア、ニジェールの3カ国が反対。8カ国が棄権し、1カ国は投票に参加しなかった。
AP通信が入手した決議案の草案には、ラファエル・グロッシIAEA事務局長に対し、「IAEA規程の関連条項に基づき、IAEAが抱く懸念を国連安保理と国連総会に報告する」よう求める内容が盛り込まれている。
また決議案は、イランが過去の合意を履行していない状況を速やかに是正するとともに、核物質の軍事転用を防ぐため、IAEAが必要と判断する措置を講じるよう改めて求めている。
今回の決議案は、イランが調査に協力しなかったことを受け、IAEA理事会がイランによる核不拡散義務の不履行を正式に認定した2025年6月以降、検討が続けられてきた。
イランの国連ウィーン事務所代表を務めるレザ・ナジャフィ大使は、今回の決議について「政治的な道具だ」と批判し、「IAEAの独立性、公平性、信頼性への信用を損なう」と主張した。
ナジャフィ大使はさらに、米国とイスラエルとの戦争が続いているため、現時点でイラン国内の核施設に対する国連査察を受け入れる義務を履行することは不可能だと訴えた。
米国は最近、イランの石油タンカー5隻を撃沈し、イランも報復としてヨルダンにある米国関連の標的を攻撃するなど、両国間では再び武力衝突が激化している。
昨年6月にイスラエルと米国がイランを攻撃した、いわゆる「12日間戦争」以降、イランはIAEA査察団に対し、攻撃の影響を受けた核施設への立ち入りを認めていない。
このためIAEAは現在、イランが保有する兵器級に近い高濃縮ウランの備蓄状況を確認できていない。
ナジャフィ大使は、米国とイスラエルによる空爆によって、イランの核施設へ査察官が安全に立ち入ることが事実上不可能になったと説明した。
イラン外務省のカゼム・ガリババディ次官もSNSのXで、「米国はイランの保障措置対象となっている核施設を攻撃し、通常の検証手続きを妨害した。そのうえ、その妨害そのものを口実にIAEA理事会で決議案を可決させた」と批判した。
IAEAによると、イランは濃縮度60%のウランを440.9キロ保有している。
60%濃縮ウランは、核兵器に使用可能とされる約90%の兵器級ウランに到達するための技術的な段階の一つに位置付けられる。
グロッシIAEA事務局長は昨年、AP通信のインタビューで、イランが核兵器開発を決断した場合、現在の備蓄量から最大10発の核爆弾を製造できる可能性があると警告していた。
ただしグロッシ氏は、これはイランがすでに核兵器を保有していることを意味するものではないとも強調している。
