「モスクワも射程に入る」ロシアが反発 米軍の移動式発射システムが北欧へ
米海軍のコンテナ型発射システム、ノルウェー・トロンハイムに展開
トマホーク運用可能…実際にミサイルを伴ったかは非公表

米国が長距離巡航ミサイルを運用できる移動式発射システムをノルウェーまで展開したことを受け、ロシアが強く反発した。北極圏における米軍の長距離攻撃能力が、ロシアの首都モスクワまで脅かしかねないとの理由からだ。
ロイター通信などによると、ロシア外務省は7日(現地時間)、米国が北大西洋条約機構(NATO)加盟国のノルウェーにミサイル発射システムを展開したことについて、戦略的安定を損なう措置だと批判したという。
問題となった装備は、米海軍のコンテナ型発射システム(CLS)だ。米軍は先月27日、C-17「グローブマスターIII」輸送機で同システムをノルウェーのトロンハイムに輸送した。米国、英国、ノルウェーが先月26日から今月4日まで実施した「アトランティック・シティ26」演習に投入するためだ。
CLSは、一般的な貨物コンテナに似た構造の内部にミサイル発射装置を収めたシステムだ。輸送機で迅速に運搬できるため、必要に応じて陸上の前方地域に展開できるのが特徴だ。
米海軍は過去に同システムからSM-6ミサイルを試射しており、トマホーク巡航ミサイルも運用できるとされる。ただ、米軍は今回の演習に実際のトマホークやその他の実戦用ミサイルを持ち込んだかどうかは明らかにしていない。
ロシア「モスクワ含む欧州側ロシアが射程内」…戦時の攻撃対象にも言及

ロシアが敏感に反応しているのは、発射システムそのものより、そこに搭載できる長距離兵器だ。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ノルウェーに展開されたシステムがトマホークを運用できるとし、ここから発射した場合、「モスクワを含む欧州側ロシアのかなりの範囲」が射程に入ると主張した。
ロシア外務省は、この発射システムの配備場所や指揮統制施設についても、自国の戦略抑止戦力の作戦計画で考慮するとの立場を示した。武力衝突が起きた場合、こうした施設がロシア軍の攻撃対象となる可能性があることを意味する。
ロシアは、今回の展開が米国との軍備管理協議にも悪影響を及ぼすと主張した。米国が欧州で長距離攻撃が可能な地上発射型システムを自由に移動させれば、ロシア側の対応負担が増し、軍拡競争も激化しかねないとの論理だ。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官も、ノルウェーの軍事インフラ強化の動きを問題視し、ロシアを標的とした軍備増強が続けば、追加の安全保障措置を講じる可能性があるとの趣旨で警告した。
なぜノルウェーまで…北極圏で「必要時に即展開」を検証

米軍がCLSをノルウェーまで運んだ目的は、北極圏で長距離火力を迅速に投入する能力を検証することにある。
今回の演習では、遠征基地の運用や海洋監視、連合火力、兵站・通信資産の迅速な展開能力などを試験した。ノルウェーは北大西洋と北極海を結ぶ戦略的要衝で、ウクライナ戦争以降、ロシアとNATOの軍事活動が活発になる中、その重要性が改めて高まっている。
CLSのような移動式発射システムは、固定式ミサイル基地とは異なり、危機の際に別の地域へ移動できる点でロシアにとって負担となる。長距離ミサイルを常時配備しなくても、必要な時に発射システムを北欧の前方地域へ迅速に投入できるためだ。
今回の展開自体は演習を目的としたものだ。公開された米軍資料でも、発射システムがトロンハイムに輸送されたことが確認できるだけで、長距離ミサイルを同時に配備したかどうかは明らかにされていない。
それでもロシアが、モスクワが射程に入ることや、武力衝突時に攻撃対象となる可能性まで公に言及したことは、北極圏における米軍の長距離攻撃システムが戦略上、敏感な問題であることを示している。米国の迅速な展開能力が強化されるほど、北欧を巡るロシアとNATOの長距離火力を巡る競争も、新たな緊張要因となる見通しだ。
